iPS脊髄損傷治療 慶大が初移植成功

iPS細胞から作製した神経細胞のもととなる細胞(慶応大・石川充特任助教、岡野栄之教授提供)
iPS細胞から作製した神経細胞のもととなる細胞(慶応大・石川充特任助教、岡野栄之教授提供)

人工多能性幹細胞(iPS細胞)から神経のもとになる細胞を作り、脊髄(せきずい)損傷患者に移植する世界初の臨床研究について、慶応大などの研究チームは14日、最初の患者への移植を昨年行ったことを明らかにした。手術は成功し、患者の経過は良好だという。

移植手術は、脊髄を損傷してから2~4週間の亜急性期という時期で、神経信号が途絶し感覚や運動機能が完全にまひした重度患者に昨年12月、東京都新宿区の慶大病院で実施した。性別や年代は非公開。術後、1年間にわたって安全性や有効性を観察する。

チームは、拒絶反応が起きにくい免疫タイプの健常者の血液から作った京都大の備蓄iPS細胞を使い、神経のもとになる細胞を作製。細胞約200万個を患部に移植して新たな神経細胞を形成させ、神経信号の途絶を修復し運動機能や感覚の回復を目指した。

現時点で移植の効果が確認できているかどうかは明らかにせず、「悪い方に向かっているということはない」との説明にとどめた。

計画を指揮した岡野栄之(ひでゆき)・慶大教授は「やっと1例目にたどり着き大変うれしく思っている。今後は(損傷からの経過期間がさらに長い)慢性期の患者を対象とした臨床研究の計画も急ぎたい」などと話した。

脊髄損傷は交通事故やスポーツでのけがなどによって、背骨の中を通る脊髄の神経細胞が傷付き、手足の運動機能などを失う障害。国内では毎年約5千人が受傷し、10万人以上の患者がいるとみられる。障害から半年以上経過し慢性化すると確立した治療法がない。

iPS細胞を利用した国内の臨床研究や治験は、重い目の病気やパーキンソン病、心不全、頭部や卵巣のがん、再生不良性貧血などを対象に、既に移植手術が実施されている。

半年以上経過の患者にも期待 iPS脊椎損傷治療