チーム学校~取材の現場から

スクールポリス 命を守る兆候見逃すな

愛知県弥富(やとみ)市の市立中学校で昨年11月、3年生の男子生徒が同学年の少年に刺殺される事件が発生した。その直後、インターネット上で「スクールポリスが必要なのではないか」という声が上がった。

スクールポリスは、もともと米国などで学校に警察関係者や警備員らが常駐する制度で、不審者対応や校内暴力の抑止などを幅広く担う。ただ、日本では「教育現場に警察権力はそぐわない」とする意見が根強く、学校でこうした事件が起こるたびに必要性を指摘する声が上がるが、制度化されるには至っていない。

だが、近い存在はある。昨年取材した岡山県警少年課の「学校警察連絡室」は平成26年の設立以来、現職警察官が対象の小中学校内をこまめに巡回、少年事件につながりかねない小さな芽も摘み取ってきた。

実際にスクールポリスがいれば、今回の刺殺事件は防げたのか。岡山県警少年課の小野田敦次長(48)は「もしスクールポリスが校内にいたとしても、防げていたかは分からない」と話す。事件当日、校内に制服姿の警察官がいれば、犯行を思いとどまる抑止力になる可能性はあるが、必ずとは言い切れない。

岡山県警の活動の真骨頂はいつでも相談できる身近さと、早期介入により事件化を未然に防ぐことにある。校内の掲示物が破られたと聞けば周囲を警戒する。子供同士の小さなトラブルからいじめの兆候があると聞けば、すぐさま非行防止教室を開く。教員との雑談で「少し気になる子がいて…」と切り出され、きっかけをつかむこともある。「どんな小さなことでも話せて、連携できるように」と心がけ、信頼を築いてきた。

ただ、最初から順調だったわけではなく、警察の介入を心配する声も少なくなかったという。小野田次長は「一朝一夕にできるものではなく、教育現場との連携には数年かかった。学校数がそう多くないからできた、ということもあるだろう」と話した。

弥富市の事件では、加害少年が9カ月前に学校の調査で「いじめられたことがある」としたが、直後の聞き取りに「今は大丈夫です」と答え、支援の手は差し伸べられなかった。被害生徒の殺害を決意した引き金が何だったのかは判然としていない。

だが、限られた数の教員が子供と向き合う難しさはあったのではないか。警察をはじめ心理や福祉、法律などさまざまな専門職が連携して子供を支える「チーム学校」の取り組みは、自治体や学校によって濃淡がある。より多くの目があれば、大人の誰かが加害少年の異変に気付けたかもしれない。

子供の命に関わる取り組みに、地域や学校による差があっていいはずがない。守れなかった2人の未来が、そう訴えかけてくるようだ。(木ノ下めぐみ)

■チーム学校~支援の現場から