井崎脩五郎のおもしろ競馬学

「桜吹雪」が1番人気の理由は…

桜吹雪定食-。

駅裏の定食屋の1番人気である。

聞いたことのない定食だから、初めてのれんをくぐったお客さんは興味を引かれて、たいがい聞く。

「あの、桜吹雪定食というのは、何ですか?」

「はい、あれは、とろろご飯に、新ショウガをおろしてふりかけたものです。おいしいですよ」

「じゃあ、それ」

見た目がたしかに桜吹雪のようにきれいだし、うまいので、今年75歳のご主人は「毎日、山芋を10本、20本とすりおろしているので、腱鞘炎(けんしょうえん)になりそう」と、いわゆるうれしい悲鳴を上げている。

ご主人がこの定食を考え出したのは、名前の「金四郎」からきている。そう、背(せな)にかけての桜吹雪で鳴らした名奉行、遠山金四郎とは同じ名前。

「テレビドラマの遠山の金さんも、昔から見てますよ。中村梅之助、杉良太郎、高橋英樹、松平健。どの金さんもよかったですねえ」

聞けば、競馬でも桜吹雪を買ったことがあるという。

1978年の京王杯オータムハンデ。

サクラソロン(1番人気)

フブキジョー(4番人気)

この「サクラ」「フブキ」を1点で買ったら、フブキは2着に追い込んできたが、サクラがハイペースに巻き込まれて5着。「いい思い出ですよ」と笑う。

そんなことを話しているときに、この店の常連である近くの寺のご住職が、こういう話を教えてくださった。

「遠山の金さんが、お白洲の場で、この桜吹雪が見えねえかと、右の片袖を脱ぐシーンがあるでしょ」

「ええ」

「あれは、仏教の世界では、偏袒右肩(へんたんうけん)といって、最敬礼のしるしなんですよ」

「そうなんですか」

明解古語辞典(三省堂)を引いたら載っていた。

偏袒右肩=右の片袖を脱いで、肉体を現すこと。古代インドで最敬礼の姿。

勉強になるなあ。(競馬コラムニスト)