主張

感染症法改正案 今出さずにいつ出すのか

政府は、通常国会での感染症法改正案の提出を見送る方針だ。

論外というほかない。新型コロナウイルスの感染症対策を強化するための法律である。自民党内からも批判が出ていることを、政府は重く見るべきである。

岸田文雄首相は昨年10月の所信表明演説で「司令塔機能の強化や人流抑制、医療資源確保のための法改正、国産ワクチンや治療薬の開発など、危機管理を抜本的に強化する」と表明した。目玉法案として、感染症法などの早期改正に意欲を示したもので、医療資源確保に向けた最初の一歩となるはずだった。

ところが、どうだ。岸田首相は今月9日のフジテレビ番組で「まずは今、用意したものをしっかり稼働させることに集中したい。6月までに中長期的な課題をしっかり洗いだした上で法改正を考えていく」と述べ、通常国会での改正案提出を見送る考えを示した。

耳を疑う。事態が収束するのを待って、のんびり法律を作る、と言っているのに等しい。改正案の提出すらできないとなれば、先が思いやられる。

改正案は、病床確保に向け、国や都道府県と医療機関が結ぶ協定を法律上の仕組みとし、実効性を高める狙いがあった。

昨夏の第5波での医療崩壊を忘れたのか。患者を診察する医療機関や病床の確保は、一貫して課題だった。法の制定が急がれるのは自明である。病床の確保は待ったなしで、コロナが収まってからでは遅すぎる。

後藤茂之厚生労働相にいたっては11日の会見で、コロナ禍の現況について、「足元に火がついている」と語ったものの、「権利義務に関わる問題について、もう少し検討してから法案を提出するという考え方はある」との認識だ。政府の緊張感のなさにあきれる。事態は深刻である。二の足を踏んでいる場合ではない。

医師会関係者の中には、法改正で病床確保のあり方を指図されることへの反発がある。むしろ、病床不足による医療体制の逼迫(ひっぱく)が行政と医療機関との連携不足によるものだったと反省し、法改正をすべきではないのか。

政府・与党は参院選を前にした医師会関係者の反対論を気にせずに法改正を実現すべきだ。

国民の命を守る以上に優先すべきものはない。