春高バレーを沸かせた二大〝巨塔〟 牧と甲斐「日本の未来は明るい」

優勝候補の駿台学園を相手に強打を放つ日南振徳の甲斐優斗(1)。今大会で才能を開花させた=7日、東京体育館(桐山弘太撮影)
優勝候補の駿台学園を相手に強打を放つ日南振徳の甲斐優斗(1)。今大会で才能を開花させた=7日、東京体育館(桐山弘太撮影)

急成長の甲斐「日本の宝に」

初出場で4強の日南振徳の躍進を支えたのが、身長200センチの甲斐だった。高校入学時は185センチほどだった身長が、「ほとんど寝てばかりだった」という新型コロナウイルス禍の自粛期間に急成長。両ひざの成長痛で高校2年の冬から約半年間は満足に練習できなかったが、9人制バレーの実業団選手だった父、晃宏さん譲りのバレーセンスでチームを牽引。2009年開校の県立校を、昨夏の高校総体で初出場での8強入りに導いた。

準決勝で鎮西に敗れ引き上げる日南振徳の甲斐優斗(右から2人目)。今大会で才能を開花させた=8日、東京体育館(長尾みなみ撮影)
準決勝で鎮西に敗れ引き上げる日南振徳の甲斐優斗(右から2人目)。今大会で才能を開花させた=8日、東京体育館(長尾みなみ撮影)

昨夏以降の下半身強化が実り、最高到達点は20センチアップの353センチ。高校生離れした高さで相手ブロックの上から強打を突き刺し、守備でも高い壁として立ちはだかった。センターながら後衛でもリベロと変わることなくコートに立ち、強烈なバックアタックも武器とする。3回戦では、昨夏の高校総体準優勝の駿台学園を相手に42得点を挙げて撃破。準決勝では鎮西の舛本颯真(そうま、2年)とのエース対決に敗れたものの、その才能を広く知らしめた。

春高が3月開催だった全国高校選抜優勝大会時代の2009年に都城工を優勝に導いた実績を持つ鍋倉雄次郎監督は、「彼が持っているポテンシャルが少しずつ花開きだしたのかなというところ。大学や上のカテゴリーで一つ一つ経験させていけば、将来的には日本の宝になるような選手になるのでは」と目を細める。

1年半前、大腸がんで亡くなった父からは「トスが上がったらスパイカーの責任だ」とエースの心持ちをたたき込まれたという。兄を追って専大に進学するという18歳。「苦しい場面でしっかり決めきれる選手にならないといけない。今回なれなかった日本一を目指したい」と力を込めた。

従来の大型選手に抱かれるイメージを覆すような、しなやかで機敏な2人のプレーに、指導者からは「日本の未来は明るい」という声も聞こえてきた。悔しさも経験した二大〝巨塔〟はどんな成長曲線を描くのか。2年後のパリ五輪にも期待が膨らむ。(運動部 川峯千尋)

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