和歌山県が誘致を進めているカジノを含む統合型リゾート施設(IR)で、県が4月までに国に提出する区域整備計画原案の内容が13日、分かった。施設名称は「ThePACIFIC」(仮称)とし、米カジノ大手が運営に加わるカジノ施設のほか、1万2千人収容の国際会議場、計2638室の宿泊施設などを備え、2027(令和9)年秋ごろの開業を目指すとしている。
IR誘致を表明している大阪府・大阪市と長崎県では、すでに区域整備計画の骨子や素案を公表。カナダのクレアベスト・グループを事業者とし、和歌山市の人工島「和歌山マリーナシティ」への誘致を目指している和歌山県も近く公表する見通し。
原案によると、IR区域全体のテーマを「『和歌山の自然資源』と『世界最先端のテクノロジー』の融合」と設定。IR区域の面積は約23万6千平方メートルで、建築物は、ホテル施設やカジノ施設などでつくる本棟と、国際会議場施設や展示施設などでつくるMICE棟などで構成する。
カジノ施設は、コンソーシアム(共同事業体)に参加予定の米カジノ大手シーザーズ・エンターテインメントの運営ノウハウを生かす。具体的には、カードゲームや電子ゲーム、ポーカーなどゲームエリアごとに担当運営部門を設定、マネジャーなどを置いて、ディーラーや顧客のカジノ行為の管理・監督などにあたる。カジノ区域は隔離し、本人確認を要するゲート以外からは入場できない設計とする。
国際会議場や宿泊施設のほか、ドーム型で全天候営業可能なビーチリゾート施設や、コンピューターゲームの腕前で勝敗を競うeスポーツの施設、「先端医療センター」(仮称)なども整備する。
開業2年目の2029(令和11)年3月期のIR施設全体の総収益は年間約1900億円を見込んでおり、「利益がプラスに転じる計画」としている。
和歌山県に入る入場料・納付金の見込額は、開業後5年間で入場料が計約600億円、納付金が計約1100億円と想定し、ギャンブル依存症への対策費などにあてる。
県は今後、住民説明や県議会の承認などを経て、今年4月までに区域整備計画を国に提出。国は全国で最大3カ所を整備地域として選ぶ。
東洋大国際観光学部の佐々木一彰教授(地域政策学)は、IR運営の中核を海外事業者が担うことを踏まえ、「経済効果や治安対策に加えて、運営体制や資金計画などについても地域に目に見える形で示し、理解を得る必要がある」としている。