主張

政府のコロナ対策 決断にスピード感がない

急激な感染拡大が深刻化する新型コロナウイルス対策について、岸田文雄首相は、ワクチン3回目接種の前倒しや12歳未満の子供への接種、自衛隊が運営する大規模接種センターを再び開設するなどの意向を示した。

世界的に置き換わりが進むオミクロン株の感染力の脅威は欧米での経緯をみれば明らかだったはずだ。いずれの対策も感染拡大の兆候がみられた昨年末の時点で準備しておくべきもので、遅きに失する。

折しも11日、岸田首相は就任から100日目を迎え、新型コロナ対応などについて問われ、「スピード感をもって、山積する課題に一つ一つ決断を下し、対応してきた」と振り返った。

自己評価が甘すぎないか。自治体や医療現場などには昨年から、ワクチン3回目接種の前倒しを急ぐよう政府に求める声があった。打ちたくても打つワクチンがないという恨み節も聞こえていた。

3回目接種をめぐって首相は、高齢者ら3100万人の接種をペースアップさせるとともに、3月以降に追加確保した米モデルナ製ワクチン1800万人分を活用して一般の人についても前倒しする考えを示した。だがこれでは、全く足りない。

首相の発言を受けて堀内詔子ワクチン接種推進担当相は11日、3回目接種について「1人でも多くの人に1秒でも早く進めていきたい」と述べた。では今まで何をしていたのかという話だ。菅義偉政権はワクチン接種の開始時期で国際社会に後れをとった。それでも開始以降はリーダーシップを発揮し、スピード感で他を圧した。堀内氏の前任者、河野太郎前担当相についても同様である。

一方で首相は、外国人の新規入国を原則禁止している水際強化措置について「2月末まで骨格を維持する」と表明した。水際対策はいわば、国内の感染対策を整えるための時間稼ぎである。

駐留米軍由来とみられるオミクロン株の蔓(まん)延(えん)を許しておいて、事実上の鎖国状態を長期に続ける判断に妥当性はあるのか。ワクチン接種の前倒しは、国民の健康を守るとともに、経済と日常を取り戻すための手段だ。鎖国状態の長期延期は、これに逆行する。

オミクロン株の特性を見極めつつ、接種回数や検査結果の証明と併せて入国緩和の方向で調整するのが筋ではないか。