日本銀行は12日公表した1月の地域経済報告(さくらリポート)で、景気判断を全国9地域全てで前回報告(昨年10月)から引き上げた。全地域の景気判断が一斉に引き上げられるのは平成25年10月以来、8年3カ月ぶり。新型コロナウイルスの影響がひとまず和らぎ、飲食や宿泊などサービス消費で改善が進んだ。ただ、新たな変異株「オミクロン株」の拡大で先行きの不透明感は強まっている。
項目別では、個人消費も平成17年4月に地域経済報告の発表を始めて以降で初めて、全ての地域で上方修正された。昨年9月に緊急事態宣言が全面解除されたことに伴い、百貨店や居酒屋といった業種で客足が回復し、売り上げが増加しているとの声が報告された。
また、生産では海外を中心に自動車の需要が引き続き強く、生産拠点がある東海と中国、九州・沖縄の3地域で判断を引き上げた。
さくらリポートは、12日開催の日銀支店長会議に向け各支店が企業などに聞き取った情報が集約されている。ただ、オミクロン株はここ1、2週間で急拡大しており、影響が十分反映されていない可能性がある。
一方、支店長会議に出席した日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は物価の先行きに関し、エネルギー価格の上昇を反映して生鮮食品を除く消費者物価の上昇率が「目先、プラス幅を緩やかに拡大していく」との見通しを示した。モノやサービスが値上がりすれば持ち直しかけた個人消費に打撃を与えるため、先行きの懸念材料になる。