菅前首相、政局次第でキーマンに

菅義偉前首相=国会内(矢島康弘撮影)
菅義偉前首相=国会内(矢島康弘撮影)

昨年10月に退陣した菅義偉前首相の手腕が再評価され始めている。新型コロナウイルスの感染者を激減させ、先の衆院選では自民党勝利への道筋を付けた。現在は党内で無役の菅氏だが、状況次第では再び注目を浴びる存在になりそうだ。

昨年5月、菅氏は周囲の反対を押し切ってワクチン接種目標「1日100万回」を表明。コロナ対策を所管する厚生労働省だけでなく、全国1700超の自治体を束ねる総務省や自衛隊など政府総動員で全国民へのワクチン接種を進めた。こうした取り組みの結果、全国の新規感染者数は8月下旬の約2万6千人から激減し、全国で医療提供体制が逼迫(ひっぱく)した「第5波」を封じ込めた。菅氏は12日の産経新聞の取材で「(行政や業界の)縦割りを壊し、できることは全部お願いした」と振り返った。

感染対策と経済活動を両立させ、ほぼ無観客ながら東京五輪・パラリンピックを成功させた菅氏の知見は、新型コロナの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大に直面する岸田文雄政権でも生かせるはずだ。

菅氏には幅広い人脈もある。第2次安倍晋三政権下の官房長官時代から自民と連立を組む公明党や先の衆院選で第3党に躍進した日本維新の会に太いパイプを持つ。自民党内では、二階俊博元幹事長や森山裕前国対委員長と気脈を通じ、今も一定の人気を保つ河野太郎党広報本部長や小泉進次郎前環境相とも近い。菅氏は12日の取材で、自身が率いる派閥の結成は否定したが、政策を軸にした党内勢力の結集には前向きだ。

新型コロナ対策に追われた末に「戦う気力がなくなった」として、首相就任から1年で自ら退いた菅氏。だが、最近はコロナ禍で封印していた政財界との会食を再開し、9月の知事選など重要選挙が続く沖縄県を訪問するなど活動を本格化させている。今後の活動について、菅氏は周囲に「今年は静観だ」と多くを語らないが、「非主流派」ながら政局のキーマンなのは間違いない。(小川真由美)