日本銀行が公表したさくらリポートでは、新型コロナウイルス禍の影響が根強く残る飲食業界でも前向きな声が目立った。昨年9月末に全国で緊急事態宣言が解除され、客足が戻り始めていたためだが、足元では新型コロナの新変異株「オミクロン株」の感染拡大が影を落とす。特に酒類の提供禁止など厳しい1年を過ごしてきた居酒屋業界にとっては深刻で、再び迫る〝危機〟に身構えている。
「コロナ禍以降で最も繁忙度が高まっている」(高知)、「冬季賞与は満額支給を予定」(名古屋)
さくらリポートには、長いトンネルを抜けつつある飲食業界の喜びの声が並んだ。特に居酒屋にとってコロナ禍の2年間は厳しい経営を迫られた。酒類の提供ができない中ではまともな営業ができず、東京商工リサーチが11日に発表した昨年1年間の「酒場、ビアホール」の倒産件数も152件と、一昨年に続いて過去30年間で2番目に多い数となった。
一方、POS(販売時点情報管理)システムを提供するポスタス(東京)のデータでは、コロナ前の令和元年比で、3~5割程度まで落ち込んだ居酒屋各社の売り上げが、10月以降は8割近くまで回復している。それだけに、足元のオミクロン株の感染拡大は大きな懸念材料だ。
すでに蔓延(まんえん)防止等重点措置の適用が決まった広島県などでは営業時間短縮や酒類の提供停止が要請され、外食大手のコロワイドも居酒屋「北海道」など3店舗を臨時休業。営業している店舗でも「感染対策を徹底したい」(担当者)とオミクロン株への対応に追われている。
居酒屋「鳥貴族」を展開する鳥貴族ホールディングスも昨年12月の既存店売上高は前年同月の約1・5倍で売り上げが回復してきただけに、担当者は「オミクロン株の感染がどれだけ増えるか数が読めない。東京や大阪にも重点措置が広がらないか」と感染動向に気をもむ。オミクロン株の重症化率が低いとされることから業界関係者からは「経済を回すことに重点を置いてもらいたい」との本音も聞かれた。