空港をとれたて「市場」に 苦境の航空業界が新戦略

ジェイエアのパイロットらがカニ、エビなどの生鮮食品を販売した「空の市」=昨年12月17日、大阪(伊丹)空港
ジェイエアのパイロットらがカニ、エビなどの生鮮食品を販売した「空の市」=昨年12月17日、大阪(伊丹)空港

新型コロナウイルスで航空旅客が減少する中、航空会社が旅客便を利用して就航地の生鮮食品などを運び、販売する取り組みを進めている。国内線のネットワークと空輸の迅速性を生かし、通常よりも速く新鮮な食材を届ける試み。空港のターミナルでは、出発地で朝に仕入れた食材をその日のうちに売る「市場」が盛況で、航空関係者は新しいビジネスモデルにつながると期待している。

「朝一番の飛行機で届きました。新鮮ですよ」

昨年12月中旬の大阪(伊丹)空港で、日本航空の子会社で国内線を運航する「ジェイエア」が2日間の日程で開いた「ITAMI空の市」。生きたままのズワイガニのほか、エビ、ホタテなどのいきのいい食材が並び、パイロットや客室乗務員らの声が響いた。

青森、花巻、新潟発の3便で午前中から相次ぎ到着した魚介類や野菜、果物、地酒などの特産品を同日正午から販売。開場前から買い物客の行列ができ、パイロットらは学んだ商品知識をもとに、食材の魅力を丁寧に説明していた。

同社は、就航地で生産者や卸売業者に聞いた話をもとに商品を選定。卸売業者などと契約して早朝に仕入れ、旅客機の座席下の貨物室に搭載して約1時間で輸送した。空港に到着した食材を税関検査なしにまっすぐターミナルに運び込めるのが国内線の利点だ。

買い物客には空港周辺の住民も多く、大阪府豊中市の主婦の女性(36)はホウボウや甘エビを購入。「おいしい魚を食べたくて舞鶴や福井まで出かけることもあるが、最近はコロナで旅行できない。大阪でなかなか手に入らない食材が買えてよかった」と笑顔を見せた。

「空の市」は令和2年11月から産地を変えながら開催し、今回で5回目。同社の担当者は「コロナで旅行客が減っている就航地の生産者らを応援したい」と話す。航空会社としても、落ち込んだ旅客需要を補う目的がある。

伊丹空港の昨年11月の旅客数は約91万1500人。10月から大阪などの緊急事態宣言が解除されたことから年末年始に向けて回復傾向となったが、コロナ前の令和元年比ではまだ約6割の水準にとどまる。日航は令和4年3月期の連結最終損益を1460億円の赤字と予想している。

そこで、ジェイエアは伊丹を含む全国28地点に運航する旅客便ネットワークを生かし、食材輸送を伸ばす戦略だ。昨年7月には長崎県佐世保市の鮮魚店から仕入れたサバやアジなどを長崎-伊丹便で空輸し、リムジンバスで大阪・難波の飲食店まで運ぶ実証実験を行った。

トラックを使った通常の長距離輸送では出荷から店頭に並ぶまで数日かかることもある。航空会社が物流会社や店舗と連携して空輸と地上輸送をスムーズにつなげば、当日中の輸送が可能になるという。

ジェイエアの宍倉(ししくら)幸雄社長は「朝とれた食材を鮮度を保ったまま昼に運び込めることは、今までにない希少価値」と手応えを語る。トラックよりも輸送費が高いという課題があるものの、担当者は「新規事業として成り立つようにしたい」と意気込む。

同様の取り組みは他の航空会社でも進む。ANAグループは、北海道や九州などの生鮮食品を旅客機で羽田空港まで運び、首都圏のスーパーマーケットで販売する実証実験を展開。ソラシドエアは宮崎-羽田便を利用し、荷主からの荷物引き取りから納品までを一貫して当日中に行うサービスを昨年10月から始めた。

コロナ禍で危機に陥った航空業界で芽生えた動きが、物流の「常識」を覆すのか注目される。(牛島要平)