【ロンドン=板東和正】ロシア軍による侵攻の懸念が強まるウクライナ情勢をめぐり、北大西洋条約機構(NATO)は12日、NATO加盟国とロシアとの対話枠組み「NATOロシア理事会」の会合をブリュッセルで開催する。NATOは、ロシアが求めるウクライナなど旧ソ連構成国のNATO加盟の排除については応じない見通しで、協議は困難が予想される。
ブリンケン米国務長官は理事会に先立つ11日、ウクライナのクレバ外相と電話会談。ロシアが侵攻すれば、「代償を払わせる」とロシアに改めて警告した。
NATOロシア理事会は冷戦期に敵対したNATOとロシアがテロ対策や大量破壊兵器の拡散防止で協力するため、2002年に設立。理事会開催は19年7月以来約2年半ぶりとなる。ロシアは、NATOがウクライナなど東方に拡大しないよう求め、米国とNATOに条約や協定を締結するよう求めている。
ただ、NATOのストルテンベルグ事務総長は今月10日、「全ての国が自らの道を選択する権利を持つという基本原則」を尊重する方針を強調し、「私たちはNATO加盟に向けたウクライナの動きを支援する」と述べた。同氏はウクライナ国境の情勢に懸念を示し、侵攻しないようロシア側に警告を発している。
ウクライナ情勢をめぐっては、米国とロシアが相互安全保障について協議する高官級の「戦略的安定対話」が10日、スイス・ジュネーブで開催された。ロシアは米国に対し、ウクライナなど旧ソ連諸国をNATOに加盟させないとの「保証」を要求。米国はこの要求を拒み、米露間の溝の深さを示した。リャプコフ露外務次官は、12日のNATOとの協議と13日の欧州安全保障協力機構(OSCE)での協議の結果を判断した上で、早期の協議打ち切りか継続かを決定するとの方針を表明している。