香港・新界地区南東部の新興住宅街の外れに、かつて中国への批判的な報道で知られた大手紙、蘋果(リンゴ)日報の本社ビルが残っている。
昨年のクリスマスに訪れると、正門には鎖がかけられていた。黄色い小さなリボンが1つ、踏みつけられて、地面にへばりついている。苦境に立たされた蘋果日報への連帯の意を示そうと、市民が門などにたくさん付けていたものだ。
700人を超す記者らが働いていたビルにはもう誰もいない。美味なローストグースで知られた食堂からも物音ひとつ聞こえてこない。寒々としたその光景は、葬り去られた〝自由〟の墓場のようでもあった。