主張

人口減少 政治の責任で対策進めよ 産み育ての環境作りが大切だ

誰も口にしなくなった「国難」は去ったのか。

政府与党は、突破すべき国難に日本の少子化を掲げたことを今一度思い出してもらいたい。

平成29年9月の衆院解散に当たって、当時の安倍晋三首相は「国難突破解散」だと強調した。北朝鮮の脅威と少子高齢化を国難と位置付けたのである。その結果、与党は圧勝した。この延長線上に岸田文雄政権も存在している。

女性1人が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率(出生率)は29年には1・43だった。

安倍政権は令和2年5月、少子化社会対策大綱を決定し、政府の目標として、若い世代が希望通りの数の子供を持てる「希望出生率1・8」実現を改めて掲げた。

危機感持って取り組め

同年の出生率は1・34で、5年連続の低下だった。新型コロナウイルス禍による産み控えの影響を踏まえても深刻な数字である。

少子化による人口減少という現実に正面から向き合い、官民を挙げて対策を講じていかねばならないはずだ。

にもかかわらず、政治の動きは鈍い。政府与党、野党に共通するのは危機感の欠如だ。

岸田首相は昨年10月の所信表明演説で、少子化対策を「新しい資本主義」実現のための分配戦略の方策の一つに含めた。このような位置づけでは物足りない。

対策として、保育の受け皿整備や幼稚園、保育園、小学校の連携強化、学童保育の拡充など子育て支援の促進を表明した。子育て支援は極めて大切だが、それだけで生まれる子供の数を増やせるわけではない。

12月の所信表明演説や1月4日の年頭記者会見では少子化、人口減少への言及はなかった。

すでに少子化対策大綱があるから手当ては済んでいると思っているなら残念である。

国のリーダーとして、少子化を改めて国難ととらえ、突破していく決意と対策を国民に示してもらいたい。

総務省が発表した人口推計によると、令和3年中に20歳に達し、新成人となったのは120万人で過去最少だった。直近の国勢調査で日本の総人口は5年前の調査と比べ約94万8千人も減少した。高齢化も進み、総人口の3分の1近くを65歳以上が占める。今後40年で総人口はおよそ3割減り、100年もしないうちに半減するとの推計もある。

どの数字も悲観的だが、大切なのは、減少傾向を少しでも和らげるため、政府が少子化対策に全力をあげることだ。

2年の大綱は、若い世代の希望をかなえるため、「必要な安定財源を確保しながら、総合的な少子化対策を大胆に進める必要がある」とうたった。地方自治体や民間任せではいけない。財源の手当ても含め、国が責任を持って後押しする必要がある。

政府は5年度から、子供関連政策の司令塔である「こども家庭庁」を発足させ、関係省庁に勧告権を持つ閣僚を充てる。政府の縦割り行政を排し、少子化対策につながる成果も挙げてほしい。

官民で将来不安解消を

子育て支援や、将来の不安を少しでも解消する社会保障改革など、多くの政策分野が少子化問題とリンクしていることを忘れてはならない。

日本では結婚による出産が圧倒的多数を占める。現在、30代半ば~40代半ばの就職氷河期世代には収入や生活への不安から、結婚や出産の見送りを余儀なくされた人が少なくなかったといわれる。少子化の大きな要因は、未婚者の増加である。

結婚して子供をもうけ、育てていくためには雇用の安定と所得の向上が極めて大切となる。そこに不安があれば、人口減少のペースを速め、経済社会の活力を奪ってしまう。

働き方の改革も欠かせない。育休をとりにくい職場環境であったり、女性が産後、職場に戻ってもキャリアアップを望めなかったりするようでは、出産に二の足を踏むのも当たり前だ。安心して働き家庭を持つ喜びを感じられるよう、多様な働き方を促す環境づくりを進めてほしい。

社会保障制度も持続可能だという信頼を高めていく必要がある。若い世代の将来不安を減らし、出生率上昇につながることが期待されるからだ。