「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

新庄騒動に惑わされるな…矢野阪神に左腕王国誕生の予感

阪神の新人選手入団発表会でゴリラポーズを披露する鈴木勇斗
阪神の新人選手入団発表会でゴリラポーズを披露する鈴木勇斗

新庄フィーバーの喧騒に惑わされることなく、阪神は左腕王国完成に〝全集中〟ですね。2022年が幕を開け、いよいよ来月1日からは沖縄・宜野座で春季キャンプがスタートです。宜野座から車で約30分の名護では新庄剛志監督(49)率いる日本ハムが春季キャンプを張り、さまざまなパフォーマンスで注目を集めるでしょう。しかし、背水の陣の矢野燿大監督(53)は17年ぶりのリーグ優勝に向けてチーム造りに全集中しなければならないはずです。中でも新人の鈴木勇斗投手(21=創価大から2位指名)と桐敷拓馬投手(22=新潟医療福祉大から3位指名)の左腕コンビが戦力になるのかどうかの見極めが極めて大事です。2人が合格ならば左腕王国ですね。

■新庄が虎ベンチで〝采配〟?

年明け早々、矢野阪神は新庄フィーバーの〝直撃弾〟を受けました。千葉・鎌ヶ谷の2軍施設で行われた日本ハムのスタッフミーティング(9日)に出席した新庄新監督は春季キャンプ中の2月8日の練習試合・阪神戦(宜野座)で虎ベンチに〝乱入〟し、矢野監督と入れ替わって采配をふるうプランを突如、ぶち上げたのです。

「ファンファーストで。矢野さんと何かできたらいいですよね。阪神で10年育ててもらったから、そういう意味でも、阪神ファンに喜んでもらえる何か。監督を入れ替わりますか?」

2月8日に宜野座で予定している阪神との練習試合について話題が及ぶと、新庄監督は矢野監督との〝交換トレード〟で、自ら阪神ベンチで虎の采配をすると言い出したのです。

「練習試合なんだから、ゼンゼン大丈夫」という新庄監督。確かに練習試合ですから、特別ルールが敷かれるため、出場選手の制限やイニングなどに関する規定は何もございません。昨季までの練習試合でも、一度ベンチに退いた選手が突然、代打や代走で〝再登場〟したこともあり、スコアブックをつける新聞記者泣かせの場面は多々ありましたね。

ただ、チームを指揮する監督が〝交換〟された事例は過去に一度もなく、起用された選手が故障した時の事後処理など大問題に発展する心配はあります。また他球団監督の采配を感情的に受けいれられない選手が出てくることも予想されます。現実問題としては相当なリスクを抱える、実現困難な〝珍プラン〟ですね。

新庄ハムとは2月11日にも名護で練習試合を行うことも決まっていて、今後もさまざまなパフォーマンスの〝狂言回し〟に阪神が利用される場面が出てくるのでは…と思われます。ただ、そんな喧騒の中でも矢野監督ら首脳陣は春季キャンプで見極めなければならない重要な案件があります。それは1軍キャンプスタートが決まった新人左腕2人の力量を見極めることです。

■新人左腕の力量は一軍レベルか

ドラフト2位ルーキー鈴木勇斗投手と3位ルーキー桐敷拓馬投手。鈴木は創価大では3年秋に4勝を挙げてチームをリーグ優勝に導きMVP。最速152キロの直球とスライダー、カーブ、チェンジアップを駆使します。桐敷は新潟医療福祉大で今秋のリーグ戦、平成国際大で完全試合を達成しました。最速150キロの直球とスライダー、ツーシーム、チェンジアップ、フォークを投げます。新人自主トレが開始された1月9日、矢野監督はグラウンドを視察するや、2人の1軍キャンプスタートを明言しました。「鈴木と桐敷は連れていこうかと思っている」と話しています。

チームの関係者によると矢野監督ら首脳陣は特に桐敷に注目を集めていて、ある首脳は「伊藤将司ぐらいのレベル。あれぐらいはやれるんじゃあないか」と話しているそうです。

伊藤将司ぐらいは…というのは相当な評価です。伊藤将司はJR東日本からドラフト2位で入団するとルーキーイヤーの昨季、いきなり23試合に登板して10勝7敗、防御率2・44。同じ左腕投手として、伊藤将司ぐらいの成績は…となると桐敷もいきなり2ケタ勝利を期待されているということですね。

まだ現時点では鈴木&桐敷がスカウトの評価通りなのかどうかは不鮮明です。なので先発タイプかリリーフタイプなのかも分かりません。しかし、仮に2人の左腕投手が1軍レベルで使える、さらに先発で起用できる…となるならば、今季に向けての大朗報です。

今季は及川雅貴投手(20)も先発転向を目指します。1軍デビューとなった昨季は中継ぎとして39試合に登板し、2勝3敗10ホールド、防御率3・69でしたね。「先発をやるからには2ケタ勝利を目指していきたい。貯金もしっかり残していけたら」と本人も意欲満々ですね。

そして、オフ期間中に左肘のクリーニング手術を受けた高橋遥人投手(26)も早ければ5月ぐらいには1軍のマウンドに帰ってくるでしょう。セットアッパーか場合によってはストッパーを任されるかもしれない岩崎優投手(30)や復調を目指す岩貞祐太投手(30)もいます。もし、鈴木と桐敷が1軍戦力となれば、先発候補に伊藤将、鈴木、桐敷、及川、高橋遥、復活を目指すチェン。リリーフで岩崎、岩貞と左腕投手が豊富に並ぶことになります。他球団を見ても、これほど左腕投手の名前が1軍レベルでスラスラと挙がる球団はないでしょう。

■新助っ人にオミクロン株の影響

鈴木と桐敷の使えるメドが立てば、矢野監督ら首脳陣にとっては、これ以上ない精神安定剤にもなるでしょう。オミクロン株の感染拡大で先行きが不鮮明となっている外国人選手の入国時期。沖縄の感染者の急拡大を見るならば、外国人選手の沖縄・春季キャンプ参加はどうなるのか?全く予断を許しません。仮に新守護神を予定しているカイル・ケラー投手(28)や先発候補アーロン・ウイルカースン投手(30)ら新外国人投手やガンケルの来日に影響が出た場合、3月25日のシーズン開幕(開幕戦はヤクルト戦=京セラ)を万全の状態では迎えられない心配は出てきます。

そうした状況下でも鈴木と桐敷が戦力となるならば開幕ローテーションもキッチリ組めますね。3・25からのヤクルト3連戦は青柳、伊藤将、西勇輝(鈴木か桐敷)、続く3・29からの広島3連戦(マツダ)では秋山、及川、鈴木(桐敷)…。あくまでも手前勝手な予想ですが、ここに藤浪も加わります。ガンケルやアルカンタラら外国人投手に頼ることなく、シーズン開幕当初はローテーションを組んでいけますね。

矢野監督が鈴木と桐敷を1軍キャンプに呼んだのは相当な期待の表れです。期待通りの実力をブルペンで見せるならば、虎は一気に左腕王国の城を築けるかもしれません。あまり過度な期待をかけて故障されては困りますので、進軍ラッパはこのへんで止めておきますが、鈴木&桐敷は宜野座春季キャンプでの一番の注目ではないでしょうか。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。