「背伸び」と「身の丈」 市場再編で分かれた判断

東京都中央区の東京証券取引所(飯田英男撮影)
東京都中央区の東京証券取引所(飯田英男撮影)

4月の市場再編に先立ち、東京証券取引所は11日、各市場ごとの上場企業リストを発表した。三つの市場区分で、最上位が「プライム」、残る二つは「スタンダード」と「グロース」となる。再編では株式の時価総額や市場で流通する割合の基準と企業統治の指針を市場ごとに定め、上場する企業に満たすよう求めている。最上位の「プライム」には最も厳しい基準と指針を設定され、プライム上場企業はブランドの向上につながり、資金調達がしやすくなるほか、採用面でもいい人材が集めやすくなるとされる。そのため〝背伸び〟をしてでもプライム入りを選んだ企業がいた一方、コスト増の懸念などから現在は東証1部にいるが、あえて「スタンダード」市場を選択する企業もみられた。

最上位となるプライム入りリストには、トヨタ自動車やパナソニックなど国内の名だたる企業が並ぶ。ただ、プライムの上場基準は厳しい。当面は「経過措置」を受けながら、将来的な基準適合を目指す企業も多い。

ゆうちょ銀行も同社の株式の89%を親会社の日本郵政が保有していることから、「流通株式35%以上」の基準が未達で「経過措置」を受けた。同社の担当者は「東証一部からプライム市場に移行しないことは、社会的信用の低下につながるリスクがある」と、プライム入りへのこだわりを説明。令和8年3月末までに基準の達成を目指す方針で、「日本郵政がゆうちょ銀株を売却しやすいように、企業価値を高めていきたい」と意気込む。「とらふぐ亭」を展開する「東京一番フーズ」も平成29年に米国に支店を出すなど海外進出を進めており、「世界の資本を集めるにはプライム入りが不可欠」(同社)と、令和10年までの基準達成を目指す。

一方で、レシピ検索サイトを運営するクックパッドは将来的な上場基準への抵触リスクを考慮し東証1部からスタンダード入りを選択した。「プライムを選択した場合に求められる基準の中には、さらなるコストや労力を要するものがある」(同社)ためで、限られた経営資源と資金をサービスの開発・拡大に配分することを優先した。

国内事業が中心の企業もスタンダードを選ぶケースが目立つ。富山銀行の担当者は、株主が地元の企業や個人が中心であることを挙げ、「地方銀行として身の丈にあった市場を選んだ」と説明。クリーニング大手の白洋舎もスタンダードを選択した。(蕎麦谷里志、米沢文、高久清史)

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