ビブリオエッセー

されど人生。優しく励ます言葉 「今を生きるあなたへ」瀬戸内寂聴 (聞き手)瀬尾まなほ(SB新書)

人生の課題のハードルが年々上がっていると実感する年齢になった。病気や別れなど多くの不安が心の洗濯機をグルグル回っている。つらい時、弱気の波にのまれそうになった時、寂聴さんの言葉が励ましてくれる。

この本は寂聴さんが亡くなる3カ月ほど前、秘書の瀬尾さんの質問に答えた「最後の語り下ろし」だ。絶妙の問いや疑問に共感しながら読んだ。隣で聞いているような気分になる。

第一章は「愛は見返りを求めません」。「私が好きになった男に、ロクな人はいません」と笑わせながら、されど恋愛は「生きる原動力」と語る。「理解してくれる人、同情してくれる人が目の前に現れれば、人はその人のことが好きになる」。それによって立ち直ることができると説いている。私も友情に救われてきたことに気がついた。寂聴さんの教えは応用がきく。人間関係を優しくほぐしてくれる。

第五章は「ものごとは必ず変わります」。仏教の「無常」について。「すべてのものは移り変わっていき、一つとして不変のものなどない」ということだ。頭では分かっていてもつい忘れがちになる。つらいことも永遠に続くわけではない。悲観的にならず、まず立ち上がることだという。ただし、いいことも永遠には続きません、と言い添える。

「和顔施(わがんせ)」というすてきな言葉も知った。いつも笑顔を絶やさず。そして他人の幸せを喜ぼうと語った寂聴さん。忘れないでいたい。

「あの世」があるかどうかわからないと語る寂聴さんに瀬尾さんは「あると思ったほうが楽しくないですか」と聞く。すると「そのほうが楽しい」と返していた。その寂聴さんはもういない。これからもリモート出演してくれたらと思うのは私だけではないだろう。

松山市 赤樫順子(47)



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