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物価上昇で貧困化は進むのか 論説副委員長・長谷川秀行

岸田文雄首相=6日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)
岸田文雄首相=6日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)

元来、行列ができる名店であっても、長時間並ぶくらいなら行きたくないというのが私の性格なので、初詣も混雑の少ない神社を選ぶことが多かった。ただ、家族が入試を控えている今年はそうもいかず、多くの受験生が参拝する神社に行った。行列は30分ほどだったか。大したことはないかもしれないが、オミクロン株の広がりが懸念される中での「密」は行列嫌いとは別の意味で気になる。

くれぐれも新型コロナウイルス感染の第6波が深刻にならないようにと改めて思った。コロナ禍で経済や暮らしが立ち行かなくなれば、岸田文雄首相が「新しい資本主義」で目指すという分厚い中間層の復活など望むべくもない。

コロナ禍は非正規労働者などの所得・雇用を悪化させた。一方で原油や穀物などの価格高騰のあおりを受けて、生活必需品の物価が上昇しており、低所得層の暮らしをさらに厳しくすることも懸念されている。第6波がこれに拍車をかける事態は避けたい。

思い起こせば、似た現象は10年ほど前にも指摘された。賃金が伸びない中で、ガソリンや電気、食品などの価格が高騰し、富裕層よりも生活必需品の支出割合が高い中間層の貧困化が進む。なじみは薄いが、「スクリューフレーション」と呼ばれる現象だ。第2次安倍晋三政権の初期には、日本でもこの現象が当てはまるのではないかと国会でも取り上げられた。

その後、資源価格や穀物価格が総じて安定したため話題にはならなくなったが、コロナ禍の今、再びスクリューフレーションの懸念が高まった。気がかりなのは、これが長期化することだ。

少なくとも資源価格などが低位で安定しないと潜在的なリスクはなくならない。価格高騰の背景には、世界経済がコロナ禍からひとまず回復し、需要が増大したこともある。米調査会社の予測によると、今年最大のリスクは中国のゼロコロナ政策が失敗して経済悪化をもたらすことだというが、これが的中すればどうなるか。中国の需要減で資源や穀物が安くなるかもしれないが、そもそも中国経済の悪化で日本経済が打撃を受ければ、企業の多くは賃上げどころではなくなるだろう。

こうしたやっかいな状況に対して岸田政権は適切に対処しなければならない。もたつけば、中間層の復活どころか貧困化が進むと厳しく認識しておくべきである。