【北京=三塚聖平】中国当局による新疆(しんきょう)ウイグル自治区での強制労働疑惑をめぐり、米国企業が中国で批判されるケースが相次いでいる。米系会員制スーパーが新疆産品の販売を停止したとして退会が呼び掛けられた。米国は新疆からの物品輸入を原則禁止する法律を成立させており、米中両国で事業を行う企業が板挟みになるケースがさらに増える可能性がある。
中国の会員制交流サイト(SNS)で昨年末、米小売り大手ウォルマート系の会員制スーパー「サムズクラブ」が批判を浴びた。オンラインショップで新疆産の商品が検索できなくなったという情報が広がったためだ。中国メディアは「在庫切れ」という同社側のコメントを伝えたが、SNSでは「新疆産の排除か」といった投稿であふれた。一部の店舗では退会者が続出したという。
中国メディアによると、サムズクラブは昨年末までに中国の23都市で36店舗を展開し、会員数は400万人超という。中国共産党中央規律検査委員会は先月31日に「中国の消費者は退会という行動で、国家の利益を断固として守る立場を示した」と強調した。
中国メディアは今月5日、広東省深圳(しんせん)の公安当局がウォルマートの中国現地法人に対し、情報セキュリティーに関する是正を求めていたと報じた。サムズクラブの問題との関連は不明だが、同社に対する圧力が多方面で強まっていく可能性もある。
また、米半導体大手インテルも先月下旬、仕入れ先に新疆の製品や労働力を使わないよう求めていたことが中国で批判を受け、謝罪に追い込まれている。
バイデン米政権は先月23日に「ウイグル強制労働防止法」を成立させ、新疆での強制労働疑惑に関する対中圧力を強化させている。中国政府は「中国内政への乱暴な干渉」と反発しており、中国で事業を展開する米企業は対応に苦慮しているとみられる。
米電気自動車(EV)大手テスラはこのほど、新疆に販売店を開設したことが明らかになり、米議員から「弾圧の隠蔽(いんぺい)に加担」していると批判された。