73歳男性がK-1デビューへ 「青春が戻った」

キックの夢破れて

佐野さんは、地元の高校で、寸止めが基本の伝統空手に取り組んでいた。高校卒業後、山梨県庁に就職したが、当時、高い人気を誇ったキックボクシングに魅了され、20歳の時に県庁を辞め、上京しキックボクシングのジムに通った。アルバイトで生活費やジムの費用を賄っていたが「お金がなくて、キックの道を挫折せざるを得なかった」と振り返る。

その後、東京都内で飲食店などを手広く展開していた同町出身の経営者に声をかけられ、その会社を手伝い、都心のすし店の店長を任された。23歳の時に独立し、東京・恵比寿ですし店を始めた。事業は順調に広がり、都内ですし店や居酒屋など5店舗を経営するようになった。

余裕ができたことで、26歳の時に空手を再開。今度は直接打撃を行うフルコンタクト空手の道場に通い始め、47歳まで続けてきた。仕事も飲食業から不動産賃貸などに徐々にシフトし、52歳の時に出身地の同町でマンション経営などを始め、生活拠点を山梨に移した。

ジムの塚原圭会長相手にスパーリングする佐野茂男さん(左)=山梨県南アルプス市(平尾孝撮影)
ジムの塚原圭会長相手にスパーリングする佐野茂男さん(左)=山梨県南アルプス市(平尾孝撮影)

試合の準備に集中

山梨に戻ってからは伝統空手を続けていたが、昨年4月、73歳の時に、南アルプス市でT-GYMを見つけ、飛び込みで見学。「キックの夢再び」と、2回の見学後、入門を申し出た。

同ジムはプロの女子チャンピオンを輩出し、プロを目指す選手も所属するが、ダイエット目的などで通う人もおり入門が認められた。だが塚原会長が「普段は紳士だが、スイッチが入ったときは怖いくらい」という、佐野さんのファイターぶりを見て、40歳以上のクラスでK-1デビューが決まった。

塚原会長によれば「70歳を超えてハードワークを続ける佐野さんを見て、ジム全体のモチベーションが上がる」といい、自身や若い選手への相乗効果も大きい。しかし、デビュー戦の約1週間後には74歳になる佐野さんは、周囲の声には関心はない。「青春が戻った」と、懸命にパンチを繰り出し、試合の準備に集中している。(平尾孝)

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