主張

不妊治療 保険適用後の道筋を示せ

不妊治療に公的医療保険を適用する制度の骨格が固まった。厚生労働省は今後、制度の詳細を詰めて令和4年度の診療報酬改定に盛り込む。

費用負担が障害になって不妊治療を選べなかった人が、治療しやすくなることは喜ばしい。

ただし、これで不妊治療の分かりにくさが解消され、医療機関の質がそろうかといえば、心もとない。

今後、治療実績などをどのように開示できるか、患者の悩みに応えるカウンセリングをどのように提供するか、厚労省は期限を切って道筋を示してもらいたい。

不妊治療は今や、特別な医療ではない。検査や治療を受けたことのある夫婦は日本では約5・5組に1組に上る。

だが、長く自費診療として扱われており、患者の状態が似通っていても医療機関により治療内容が違ったり、同じ治療でも価格差が大きかったりする。医師やスタッフの技術差による妊娠や出産率の違いも指摘されていた。

新たに保険適用の対象に加えられるのは、学会のガイドラインにもとづき、有効性や安全性の推奨度が高い治療である。

体外受精と顕微授精の対象になるのは、治療開始時に43歳未満の女性だ。年齢制限は現行の助成制度にならった。

保険適用は、治療を標準化して価格を決めることを意味する。治療や対象者の範囲が設定されることは妥当である。

公的給付をする以上、医療機関は情報開示により治療の透明性を高め、社会的な信頼を得ることが欠かせない。当事者団体は、医療機関ごとの年齢別の治療成績を開示するよう求めていた。見通しが立っていないのは残念だ。

患者を支える態勢にも課題がある。治療を続けても、子供が授からないことはある。カウンセラーを置いて治療の悩みや不安に伴走してほしい。これが一番の課題だともらす産科医もいるくらいだ。流産や不妊治療の経験者が相談に乗る「ピアカウンセリング」も有効だろう。

不妊治療の最大の障害が「加齢」であることは、治療に携わる医師らの共通認識だ。

20代、30代の女性があたりまえに妊娠、出産を考えられるよう、仕事と治療の両立、産み育てやすい環境をつくることが重要なのは言うまでもない。