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文庫 「往復書簡 『遠くからの声』『言葉の兆し』」(古井由吉(よしきち)・佐伯一麦(かずみ)著、講談社文芸文庫・1980円)

幼いころに経験した空襲の記憶を濃密な文体で描いた古井由吉と、日本の私小説の伝統を独自の手法で受け継いだ佐伯一麦。現代日本文学を代表する作家が、20世紀末と平成23年の東日本大震災の後に交わした往復書簡を収める。

震災後に交わされた『言葉の兆し』が興味深い。仙台で被災した佐伯が「自省を込めた悲観の情熱(パッション)によって危難と向き合うとき」とつづれば、古井は「沈黙こそ、言葉の兆すところです」と応じる。今ここにいる「私」の心もとなさと危うさを描いてきた作家の洞察力が光る。