朝晴れエッセー

かんころもちの唄・1月9日

東シナ海からの風が雪を運んでくる頃、幼い頃に食べたおやつを思い出す。

もち米に蒸した干し芋と砂糖少々を混ぜてついた長崎のかんころもちだ。渦巻き状にあんこを巻き込んだものも作っていた。

ゴム跳びにはしゃぎ、山の中の秘密基地で遊び、頰を真っ赤にして帰ると、母が火鉢の上に網を置いて1センチほどに切ったもちを置いてくれる。

焼くのは私の役目。ほどよく焼き目が付いて、お芋の香りが立ち始めると食べ頃だ。はふはふ、フーフー、ほんのり甘い極上のおやつのできあがり。

渡し船に乗っておばあちゃんの家に行くと、「よう来たとね」と言っては仕事の手を止め、サツマイモに砂糖と小麦粉を入れて練り、フライパンでこんがり焼いてくれた。付け合わせは丹精込めたお漬物。おいしかったなあ。

浜辺で拾った桜貝、丘の上から見える小さな島影、朝早く漁に出る船のポンポンというエンジンの音、学校の帰りに食べた野いちごの味。下校のチャイムが鳴るまで、教室でおしゃべりしたよね。

夏には真っ黒になって海と戯れ、試験前には皆で大慌ての対策会議。

そして恋をし家族ができ、こけたり泣いたり笑ったり、いろんなことがあったなあ。あれやこれやと、この頃無性に懐かしさがこみ上げてくる。

同時に、小さな花や鳥のさえずり、駆け出す幼子の姿や舞い散る木の葉、全ての命が愛おしく思える。

家族や旧友たちとの小さな思い出と小さな幸せが詰まった、私の大きな宝箱だ。


川合春美(64) 奈良市