日本やアジアで新型コロナの重症者や死者が欧米に比べ少ないのは、感染や症状進行を阻む謎の要因「ファクターX」が存在するためではないかと早くから指摘されてきた。正体が分かれば効率的な治療が可能になるため研究が急ピッチで進み、素顔の一端が見えたとする発表が相次いでいる。だが専門家は、韓国の失敗を例に挙げながら「ファクターXのことが分かってきたとしても油断大敵で、ワクチン接種や日常対策の重要性が変わることはない」と警鐘を鳴らしている。
ノーベル賞の山中氏が拍車
ファクターXが存在する可能性は、新型コロナの世界的な拡大が始まっていた令和2年の春ごろから指摘されていた。当時、人口100万人当たりの死者は米国が約300人、英国で約600人など、欧米主要国で3桁に上ったのに対し、日本や中国、インドネシアなどアジア各国は1桁台と非常に少なく、この理由の解明に興味を抱く研究者が多かった。さらに、ノーベル賞受賞者の山中伸弥・京都大教授が「解明すれば対策に生かせるはずだ」と指摘したことで、社会にも広く知られるようになった。