低い重症化率でも医療逼迫の恐れ オミクロン株

「感染しても軽症」との楽観論もある新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」だが、感染動向について、医療関係者や専門家らは慎重姿勢を崩さない。国内外で確認された患者では軽症者が多いが、その感染力の強さから、かつてない感染者の増加に伴って重症者の絶対数も増え、医療逼迫(ひっぱく)につながる懸念があるためだ。コロナ治療を担う現場の医師は「現状の感染は若者が中心。中高年に感染が拡大してから1、2週間経過しなければ分からない」と重症化の見極めに神経をとがらせている。

「海外、国内の患者をみても軽症者が多い。ただ、感染が高齢者や重症化リスクのある人に広がる局面に入ると、入院や重症が増加する可能性がある」。厚生労働省に対策を助言する専門家組織の脇田隆字・国立感染症研究所長は6日、会合後の会見で強調した。

厚労省のまとめでは、5日時点でオミクロン株感染者の陽性判明時の症状は192人中191人が軽症で、中等症が1人。酸素投与が必要になるレベルの中等症や重症はいない。

オミクロン株では鼻やのどといった上気道の炎症にとどまるケースが多いとの研究結果があり、ウイルスが肺で増殖して肺炎を引き起こすデルタ株などと症状が異なる。英国の報告では、入院リスクがデルタ株と比べて40~45%低下したとされる。

ただ、オミクロン株の脅威は強い感染力。米疾病対策センター(CDC)が、空気感染する水痘(水ぼうそう)並みとの見方を示したデルタ株を上回り、「(同様に空気感染する)はしか(麻疹・ましん)に近いレベル」と指摘する専門家もいる。

「重症化リスクがデルタ株の6割程度だったとしても、感染者数が2倍に増えれば、計算上は昨夏の1・2倍の重症者が生じることになり、医療の逼迫は免れない。楽観視は禁物だ」。埼玉医科大総合医療センター(埼玉県川越市)の岡秀昭教授はこう指摘する。

オミクロン株ではワクチン2回接種後のブレークスルー感染の確認が相次ぐ。岡氏は「昨年の接種時期が早かった高齢者は、感染を予防する効果がすでにかなり減弱している」と示唆する。厚労省によると、高齢者の重症化予防効果は時間経過に伴い、徐々に低下するとの報告もある。

オミクロン株感染は類を見ない速さで拡大し、国立感染症研究所は、東京と大阪では感染者の累計が2倍になる日数が直近7日間でそれぞれ1・9日、1・7日(5日時点)となり、オミクロン株への置き換わりが早い沖縄では1・3日だったと推定した。

第5波では、医療逼迫を受け、自宅で死亡する事例が相次いだ。これを教訓に国内では第6波に向けて病床が増強された。だが、第6波では軽症や無症状で自宅療養する患者が急速に増えるとみられる。新型コロナの重症化は「感染から7~10日後」とされ、地域の医療機関による自宅療養者の健康観察では、病状の急変を見落とさない運用が求められる。

政府は経口治療薬を診断翌日までに投与する体制の構築を目指す。ただ、岡氏によると、昨年末に特例承認された「モルヌピラビル」は入院や死亡リスクの低減が30%程度にとどまる上、現場への供給体制にも不安がある。錠剤が大きく、服用しづらい高齢者らもいるため、単独で切り札にはならないという。

注意喚起を目的にした蔓延(まんえん)防止等重点措置の適用に一定の効果は見込めると分析する専門家もいる。岡氏は「中高年や重症化リスクの高い人への感染拡大後、1、2週間で重症者がどの程度増えるかや、高齢者施設、医療機関のクラスター(感染者集団)が頻発しないかが、6波で緊急事態宣言が出されるかのポイントになるのではないか」と強調した。

(川畑仁志)