サッカー通信

キーワードは「ボール奪取」 なでしこ池田監督、閉塞感打破へ新戦術

昨年11月の欧州遠征では、オランダ相手に無得点に終わったなでしこ。失ったボールを素早く奪い返す戦術が求められる=ハーグ(共同)
昨年11月の欧州遠征では、オランダ相手に無得点に終わったなでしこ。失ったボールを素早く奪い返す戦術が求められる=ハーグ(共同)

昨年10月からサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」を率いる池田太監督(51)が、新たなコンセプトでチーム作りを進めている。キーワードはボール奪取だ。失ったボールへ積極的かつ組織的に働きかけて素早く奪い返す戦い方で、昨年11月の国際親善試合では欧州の強豪相手に果敢に挑戦。1~2月に来年のワールドカップ(W杯)予選を兼ねたアジア・カップを控え、短い準備期間の中でさっそく成果を求められる。

なでしこジャパンの池田太監督
なでしこジャパンの池田太監督

池田監督は就任後から目指すスタイルの一丁目一番地としてボール奪取を挙げてきた。「自分たちからボールを奪い、ゴールも奪いにいく。前線からボール保持者に圧力をかけ、プレー選択の幅を限定してボールを奪う。東京五輪で敵陣から守備にいく回数が少なかったことはデータで出ている」と力説する。

斬新な戦術ではない。J1でも昨年までの直近5シーズンで優勝4度の川崎が敵陣からの激しいボール奪取を代名詞とし、2019年シーズンの覇者で昨年も川崎に食い下がった横浜Mも同様の戦術を採用。本場の欧州主要リーグで上位を争う強豪の多くも、前線から積極的にボールを奪いにいく姿勢が目立つ。

なでしこの弱点を補う戦い方ともいえる。スピードやパワー、体格で世界に劣るなでしこは、ロングボールをほうり込まれてスピードや高さで圧倒される宿痾を抱える。狙い通りにボールを奪い切れれば保持率が高まり、なでしこの強みである技術やコンビネーションをいかせる時間帯は増える。ボールの奪取位置が敵陣深くであれば、少ない手数でゴールにも迫れる。たとえボールを奪い切れなくても、ボール保持者に重圧をかけることでロングボールの精度を下げられる。

昨年11月の欧州遠征はアイスランドに0-2、オランダに0-0と結果を出せなかったものの、敵陣から相手ボールを奪いにいく選手の姿勢は目を引いた。池田監督は欧州遠征を振り返って「いくつか連動、連係してボールを奪えたのは収穫」と評価。昨年12月に日本サッカー協会女子委員長に就任した元なでしこ監督の佐々木則夫氏も「ボールを奪わないと攻撃できないので、前線からボールを奪いにいっていた。特にオランダ戦はよかった」と述べた。

相手ゴールに近い位置から人数をかけてボールを奪いにいくことは、自陣方面に危険なスペースをつくるリスクもはらむ。欧州遠征に招集されたDF南(三菱重工浦和)は、「前からプレッシャーをかけている分、背後にスペースがあることを自覚しながらプレーしなければならない」と指摘。1対1の勝負に負けるのは許されず、協力して相手のパスコースを消す組織力も磨かなければならない。

ボール奪取の最終目的はゴールを奪うことにあり、無得点で終わった欧州遠征は物足りなさが残った。池田監督も「ボックス(ペナルティーエリア)内でのクオリティーを上げなければいけない。相手DFを動かしてブロックされないスペースをつくるためのコンビネーションや工夫、個人の力が足りない」と認めており、積極的な守備をゴールにつなげる道筋も示していく必要がある。

なでしこは15年W杯カナダ大会の準優勝以降、世界大会で結果を残せておらず、リスク覚悟でチャレンジしていかなければならないのも事実だ。オーストラリアとニュージーランドの共催となる23年W杯を見据え、「女子サッカーが積み上げてきたものをもとに、新しい景色を作り出す責任と覚悟がある」と池田監督。新たな指揮官を迎えて再出発したなでしこの挑戦が始まった。(運動部 奥山次郎)