近ごろ都に流行るもの

「冬の汗冷え対策」メリノウールやミョウバン 天然素材で予防

「吸汗」「速乾」「汗を抑え」などの文字。渋谷ロフトで扱う対策グッズの一例(重松明子撮影)
「吸汗」「速乾」「汗を抑え」などの文字。渋谷ロフトで扱う対策グッズの一例(重松明子撮影)

暑くてもコートを脱ぐことができない通勤電車内での〝滝汗〟。ブーツを脱いだ足元を凍り付かせるような湿り気…。夏よりも不快感が強い冬の汗。臭いが気になるだけでなく体温を奪われ、万病のもと「冷え」を引き起こしている。身近な汗対策として、調湿機能のあるメリノウールの肌着や汗腺を引き締めるミョウバンの制汗剤など、天然素材への回帰がこの冬のトレンドだ。「発汗外来」の医師にも冬汗の注意点を聞いた。

臭い成分が濃い

「汗をかく部位には順番がある。最初は脇と、おでこ。さらに体温上昇が続くと胸や背中などの大きな面から滝のように汗が流れてくる。暖房の効きすぎなどで額が汗ばんだら、早めに首元を開けて熱を逃すなど、体温調整しやすい服装を心がけてください」

東京・渋谷駅すぐ。発汗外来を設ける渋谷スクランブル皮膚科の下方征(ただし)院長(42)がアドバイスした。冬汗の悩みは「スーツやダウンまでぬれる」といった深刻なケースも多い。

冬汗の悩みに対応する、渋谷スクランブル皮膚科の下方征院長=東京都渋谷区 (重松明子撮影)
冬汗の悩みに対応する、渋谷スクランブル皮膚科の下方征院長=東京都渋谷区 (重松明子撮影)

「汗には色々なトリガー(引き金)が働く。緊張による手足の精神性発汗など、症状も治療方法も一様でない」と下方院長。塗り薬や飲み薬による保険診療から、脇の多汗症にはマイクロ波で汗腺を破壊する自由診療でも対応している。

汗の総量が減る冬は夏に比べ、ミネラルやアンモニアなどの臭い成分が濃い、ベタッとした汗になりがち。「入浴、サウナや運動で定期的に汗をかき、冬でも汗腺の機能を良好に保つ習慣をつけてほしい」

この冬は天然繊維、メリノウールの肌着が人気だ。保温性と水分の吸放出性、抗菌作用があることから、厳寒に汗をかく登山家や屋外作業員に愛用され、一般にも広がっている。

全国935店を展開する「ワークマン」では、スーパーエクストラファインメリノ100%の長袖シャツ(男女とも1900円)を主力とする肌着・靴下小物シリーズを9月に発売。細く柔らかな繊維の着心地と手ごろな価格が支持され、「前年度の3倍、15億円の計画を上回る売れ行き」(広報部)と好調だ。

メリノウールが汗対策に良い理由は繊維表面のウロコ状組織「スケール」の構造にある。水分を弾き、衣服内の温度・湿度に応じて開閉し、調湿してくれる。

制汗剤でも冷え予防できる。焼ミョウバンを有効成分とする「デオナチュレ」の発売元、シービックが一昨年に行ったサーモグラフィ撮影による調査では、制汗剤を塗布した足は塗布していない足よりも体温が高い…との傾向が表れた。

日本でミョウバンはナスの漬物を色よく仕上げる食品添加物として知られるが、西洋では古代ローマ時代からデオドラントに使われてきた天然鉱物「アルム石」のこと。「皮膚に塗ると毛穴や汗腺を引き締めて汗の分泌を抑制、細菌の繁殖も抑え、汗のアンモニア臭を中和する作用がある」と担当マネジャーの山口絵里さん。デオナチュレは約20年前の発売以降、日本人向けに改良を重ね口コミサイト「アットコスメ」の殿堂入りも果たしているロングセラーだ。スティック(実勢価格990円)ほかクリームやパウダーなどがある。スプレー式と違って冷感がなく、制汗剤全体の売り上げが夏の約2割に落ちる冬場でも、こちらは約6割をキープしている。

一方、全国139店を展開するロフト。寒風の中、渋谷店を訪ねると制汗剤売り場があった。「冷たくない制汗グッズありますか?」。そんな問い合わせに対応し、デオナチュレやミョウバン水などを陳列している。足冷えを防ぐ吸水・速乾の靴用インソールも多種類あり(990~2970円)、天然皮革のシープレザー製が目を引いた。

化学繊維の発熱インナーもありがたいが、高性能ゆえ「自分だけ汗だく」状態が恥ずかしい場面もある。近ごろの天然素材回帰にはSDGs(持続可能な開発目標)の機運が重なる。汗は自然の生理反応。対策も自然に還るものがいい⁉(重松明子)