米軍基地、全国で1784人感染 住民に不安渦巻く

新型コロナウイルスの感染再拡大に伴い、7日に蔓延(まんえん)防止等重点措置の適用が決まった沖縄、山口、広島各県では、米軍基地のクラスター(感染者集団)から市中感染の拡大につながったとの見方が根強い。基地内クラスターの発生は全国で相次ぐが、国内の感染対策と温度差がある上、感染状況などの情報提供が十分とはいえず、地元住民の間で不安が渦巻いている。(桑波田仰太、内田優作)

マスク着用なく

6日夜、米軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)のメインゲートから約100メートル南にある「どぶ板通り商店街」。一角にあるバーでは、私服姿の外国人2人がマスクを着用せずにビリヤードを楽しみ、時折、大声で叫ぶ様子がみられた。近くのカウンター席は、別の客で埋まっていた。

男性従業員(21)は「客の9割が外国人で、米軍関係者も多い。マスクをせずに入店する人も一定数いる」と打ち明ける。

横須賀基地は昨年12月23~30日に、米軍関係者75人の感染を確認。今月7日時点で245人に増えた。同市によると、6日には基地内で働く50代の日本人女性の感染も判明している。

同基地の会員制交流サイト(SNS)によると、5日から感染対策の水準を引き上げ、ワクチン接種の有無にかかわらず基地内でのマスク着用を義務付けたほか、入国後2週間は外出先での飲食をテークアウトに限定したという。

ただ、昼から酒を飲む米軍関係者の目撃情報があるなど緩みもみられ、ハンバーガーショップ店員の永野慎さん(44)は「基地内での感染拡大後も、商店街の様子は大きく変わっていない」と首をかしげる。

疑われる染み出し

沖縄、山口、広島各県では米軍基地内でのクラスター発生後、周辺での市中感染が急増しており、感染力が強い変異株「オミクロン株」の染み出しが疑われる。沖縄県の調査では、市中感染が疑われる複数人から基地関係者と同じ系統のオミクロン株を確認。山口県でも岩国基地(同県岩国市)内と岩国市の繁華街で同一タイプのウイルスが見つかったという。

岩国基地に隣接する広島県では岩国市と関連する感染例が多数認められており、同県の湯崎英彦知事は「感染症は基地かどうかに関係なく影響が及ぶ。基地と地元で連携できないなら、安全保障も成立しない」と厳しく指摘した。

一方、横須賀市の新規感染者は今月1~5日に0~3人だったが、6日は8人確認された。基地内で働く日本人女性も含まれるが、感染経路で基地との因果関係は確認できなかった。市の担当者は「現時点で基地から感染が広がっているとは認められないが、今後も感染状況を注視していく」と警戒感をにじませる。

横須賀基地内の情報が地元住民らに十分に伝わってこないことも、不安の種になっている。

市関係者によると、基地内の感染者数や濃厚接触者となった日本人従業員に関する情報は、日米地位協定に基づいて市の保健所に共有されるという。

ただ、濃厚接触者に関する情報は保健所から対象者本人に伝えられるのみ。基地内の日本人従業員に、どの程度の濃厚接触者がいるかなどの情報は一切公表していない。

横須賀基地で働く男性は「普段から多くの米兵と接しているが、感染者がどの程度近くにいたのかなど、誰が濃厚接触者であるかの情報が共有されたことはない。可能な限り末端の従業員にまで情報共有しないと、いずれ基地から市中に感染が漏れ出てしまうのではないか」と話した。

国内の米軍基地では昨年末からクラスターの発生が相次ぐ。基地内での感染拡大の背景には、日米地位協定に基づく入国時の検疫免除に加え、出国時の検査や入国後の行動制限が徹底されていなかった「抜け道」も指摘されている。

在日米軍によると、今月7日時点の感染者は少なくとも19施設2123人に上り、増加傾向に歯止めがかかっていない。

横田基地(東京都福生市)では昨年12月29日以降、93人の感染を確認。都や周辺6市町でつくる連絡協議会は7日、住民の不安解消のためなどとして、外出制限を含めた感染対策の強化を基地側に要請した。

三沢基地(青森県三沢市)内の感染者は171人。同県は5日、基地関係者の女性のオミクロン株感染が判明し、基地内の感染者からうつった可能性があると発表した。三村申吾知事は「さらなる感染拡大も懸念され、強い危機感を持っている」と話した。

53人の感染者が出ているキャンプ富士(静岡県御殿場市)でも、施設外に感染が波及。同県の検査で、これまでに日本人の施設従業員とその濃厚接触者4人の計5人にオミクロン株感染が確認されたという。