IRと万博 鍵を握る年 財界3団体トップ新春に語る

新型コロナウイルス禍に翻弄された令和3年の関西経済。新たな変異株「オミクロン株」が流行の兆しを見せ、4年もコロナとの戦いを余儀なくされる可能性がある。良い材料は、今年、統合型リゾート施設(IR)の大阪誘致が政府により正式承認されると予想されることだ。7年に開かれる大阪・関西万博に向けた準備も加速する。大阪・関西経済を牽引(けんいん)する関西経済連合会の松本正義会長、大阪商工会議所の尾崎裕(ひろし)会頭、関西経済同友会の古市健(たけし)代表幹事の3人に、期待と意気込みを聞いた。(聞き手はいずれも黒川信雄)

世界一のIR施設を実現せよ 関経連・松本正義会長

関西経済連合会の松本正義会長=大阪市北区の中之島センタービル(前川純一郎撮影)
関西経済連合会の松本正義会長=大阪市北区の中之島センタービル(前川純一郎撮影)


令和4年は、大阪府市が進めるIR誘致計画が政府により正式に承認される可能性がある。投資規模は1兆800億円という。IR事業者には世界一のIR施設を実現してほしい。

昨年末には、国に申請するIRの「区域整備計画」の骨子が公表されたが、中核株主であるオリックスと米MGMリゾーツ・インターナショナル傘下の日本法人のほか、主に関西を基盤とする20社が株主として名を連ねた。IRはプライベートビジネスであり、参加企業は自社の経営判断に基づいて、積極的に事業を展開していただきたい。それが結果として大阪・関西経済にも恩恵をもたらしてくれる。IRをめぐっては今後も多くの課題が浮上するだろうが、ひとつひとつ解決し、実現してほしい。

7年開催の大阪・関西万博については、今年は会場建設などが実際に進められる段階に入る。万博は国家プロジェクトであり、何としても成功させなくてはならない。関西経済連合会は、万博の成功に向けて行政や日本国際博覧会協会とも連携しているが、課題が浮上したらすぐに情報を共有し、解決する取り組みが必要だ。

例えば大阪万博は、人工島が会場になるだけに、アクセスや緊急時の対応で問題が少なくない。収益を確保するためのチケット販売も課題だ。これについては、われわれ経済団体など民間ルートを活用し、拡販することもできるだろう。

一昨年には新型コロナウイルス禍で大打撃を受けた関西経済だが、3年は少しずつ回復が進み、明るさも見えてきた。ワクチンや治療薬の開発では日本企業にさらに頑張ってほしいが、一方で日本のワクチン接種率は世界トップの水準に達し、マスクの着用、手洗いの励行なども引き続き継続されている。日本人らしい〝強み〟が発揮され、コロナの感染が抑制されている。コロナ禍は今後も続くが、4年は関西経済のさらなる回復を期待する。

関西経済の一層の成長に向けては、大手企業と中小、スタートアップ企業の連携を促進することも重要だ。関経連が掲げる関西経済の中期発展プログラム「関西ビジョン2030」では、企業間の連携を強化することで、さらなる雇用の創出や所得の増加、税収増が図れると指摘している。この実現には大手企業側がまず、アクションを取ることが重要だ。関経連としても、しっかりと取り組んでいきたい。

地元経済との融合を注視 大商・尾崎裕会頭

大阪商工会議所の尾崎裕会頭=大阪市中央区の大阪ガス本社(南雲都撮影)
大阪商工会議所の尾崎裕会頭=大阪市中央区の大阪ガス本社(南雲都撮影)


今年は大阪へのIR誘致が決まる可能性がある。IRは万博と異なり、民間企業によるビジネスだが、関西経済にインパクトを与える事業展開がなされることを期待したい。施設での雇用効果も期待できるが、それだけでなく、周辺地域での観光や宿泊、旅行といった、広域に恩恵をもたらす事業展開をしてほしい。IRが地元経済と、どのように融合するかを注視している。

さらに、大阪府市は現在、大胆な規制緩和やデジタル技術の活用で、最先端都市を実現する政府の「スーパーシティ」構想にも手を挙げており、政府の認定を取り付けられるかが注目される。規制緩和は、企業の新たな成長を実現できるカギになる。大阪は、新しいことにチャレンジする企業に寛容であり、スーパーシティが実現すれば、多くの新たなビジネスが生まれるだろう。府市はぜひ認定を勝ち取ってほしい

関西経済の起爆剤と期待される大阪・関西万博の準備は遅れている。特に海外からのパビリオン誘致は遅れが否めない。令和4年は巻き返しを図り、さらに5、6年の建設工事に向けた準備を加速してほしい。

また、中小企業が万博に参画できるよう、大商としても取り組みを進める。会場内に建設される大阪パビリオンへの参画や各種のテーマ館における技術協力、またオンライン上で展開されるバーチャル万博への参加などでも、中小企業の存在をアピールできる機会はあるだろう。

新型コロナウイルス禍で打撃を受けた関西経済は、製造業では回復が進みつつあるものの、飲食や旅行など、対面サービスを提供する業種は依然厳しさが残る。昨年はワクチン接種の進展がコロナ禍の抑制に効果を発揮したが、新たな変異株の発生がどのような影響をもたらすのかは十分な注意が必要だ。

コロナを撲滅することは容易ではないが、3度目のワクチン接種や治療薬の開発により、今後は「感染は避けたいが、万が一感染しても、何とかなる」という状況が生まれることが期待される。こうなれば、経済を支える人々の行動様式にも変化が生まれるだろう。

岸田文雄首相は「新しい資本主義」を掲げ「成長と分配の好循環」を目指しているが、中小企業は新たな成長につなげる投資を行う余力が極めて乏しい。だから、中小企業が投資を行い、成長できる環境を整備するような支援が重要だ。事業転換やデジタル化を促進するための補助金などが考えられる。

観光産業を飛躍させる契機 同友会・古市健代表幹事

関西経済同友会の古市健代表幹事=大阪市中央区の日本生命保険本店(南雲都撮影)
関西経済同友会の古市健代表幹事=大阪市中央区の日本生命保険本店(南雲都撮影)

令和3年は関西、また日本全体でも厳しい経済状況が続いた。前年がさらに厳しかった分、経済は緩やかに成長したが、今年はもう一歩力強い成長を期待したい。変異株の発生や、資源価格の上昇などのリスク要因があるが、今年は安定的な経済成長を望む。

関西経済の飛躍のカギとなるのが7年の大阪・関西万博だ。ただアラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催されているドバイ万博で、大阪万博をアピールする場になるはずだった昨年12月のジャパンデーに、変異株の影響で政財界の首脳らが訪問できなかったのは打撃だった。今年は、万博に向けた機運醸成をさらに全力で行わなくてはならない。これにはメディアも力を発揮してほしい。

今年はまた、大阪が誘致を目指すIRをめぐり、自治体からの申請が4月末に締め切られる。大阪の誘致成功に強く期待している。万博は6カ月間のイベントだが、IRは継続的に運営されるからだ。ぜひ成功させてほしい。

IRをめぐっては、新型コロナ禍の影響で当初の開業計画から大幅に遅れたが、問題とは見ていない。時間をかけ、よりよいものを作り上げてもらえればと思う。IRには、MICE(国際会議、展示会)施設が含まれるほか、エンターテインメントの部分でも従来にないサービスが提供されることになるだろう。関西の観光産業を、飛躍的に発展させる契機になるとみている。

コロナ禍が始まって約2年。その間に関西経済は、危機に対応できる力を付けることができたか。私は、関西経済がより強力になるきっかけは得られたのではないかと思っている。例えばコロナ禍以前、関西経済は訪日外国人客(インバウンド)ブームに沸いた。しかし訪日客が消滅した今、われわれが気が付いたのは、関西の観光資源を、より戦略的に活用することの重要性だ。例えば地域間で連携して、訪日客の消費をさらに伸ばしたり、より長期間滞在してもらうなどの取り組みが重要だ。

残念ながらコロナ禍において、関西では企業の廃業も少なからずあった。観光に限らず、多くの業界が打撃を受けた。そのようななか、デジタルの活用などで、危機に必死に対抗してきたのが実情だ。われわれは、さらに懸命な取り組みが求められる。

危機に打ち勝てる〝レジリエンス(回復力、強靱(きょうじん)性)〟を身につけなくてはならない。足元の雇用を守ることも大切だが、将来を見据え、産業構造の転換を図っていくことも必要だろう。