北京冬季五輪の開幕まで1カ月を切った。開催国である中国の習近平政権は覇権主義的な動きと強権姿勢をエスカレートさせている。その習氏が肝いりで実現させた〝異形の五輪〟に世界と日本はどう向き合うべきか、4人の識者らに聞く。トップバッターは、国際政治が専門の皇學館大学准教授、村上政俊氏だ。
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--バイデン米政権は北京冬季五輪の外交的ボイコットを発表した。2008年の夏季五輪ではブッシュ大統領が訪中したが、対応の違いはなぜ生じたか。
08年の北京五輪は日米ともに首脳が招待に応じた。中国側には当時の皇太子殿下(今上陛下)を招待するアイデアまであったともいう。チベットとウイグルという民族問題が五輪の前後で高まり、米国内に反対論もあった中でブッシュ氏が訪中に踏み切った背景には、中国に関与していくという対中政策の基本ラインがあった。日本も同じだ。
しかし現在、米国の専門家の間では、関与政策は近代史上で最も失敗した戦略だったという非常に厳しい評価も出ている。米国にとって最大のライバルを自らつくり出したためだ。この認識の変化が、対応の違いの根本的な要因だ。