【モスクワ=小野田雄一】中央アジアの旧ソ連構成国、カザフスタンで起きた燃料価格の値上げをめぐる暴動で、トカエフ同国大統領は5日、一部都市で発令していた2週間の非常事態宣言を全土に拡大した。トカエフ氏はまた、暴動を国家テロと位置付け、「対テロ作戦」を発動。同国内務省によると、治安部隊員ら8人が死亡し、300人以上が負傷した。デモ隊にも多数の負傷者が出ているとみられる。
トカエフ政権がデモ隊に対して過剰な鎮圧行動をとっていた場合、国際社会から強い非難を受けるのは必至だ。
トカエフ氏はまた、同国が加盟するロシア主導の「集団安全保障条約機構」(CSTO)に対テロ支援を要請。これを受け、CSTO議長国を務めるアルメニアのパシニャン首相は6日、情勢安定化までの期間限定で平和維持部隊を派遣すると発表した。ロシア大統領府サイトもパシニャン氏の発表を掲載した。
これに先立ち、ロシア外務省は5日、対話による平和的解決を要求。米国や欧州連合(EU)も、政権側とデモ側双方に自制を呼びかける声明を出した。
タス通信によると、カザフ当局は6日、アルマトイの空港に「テロ集団」が侵入し、空港施設や航空機を占拠したとして、対テロ作戦を発動。当局側に2人の死者が出たと発表した。
タス通信やロイター通信によると、カザフ政府は、自動車燃料などに使われる液化石油ガス(LPG)の価格統制が生産者に損失を与えているとして、今月1日から価格統制を撤廃。LPG価格は従来の約2倍となる1リットル当たり120テンゲ(約32円)に上昇し、2日から同国西部の都市などで抗議デモが発生した。デモは全国各地に波及した。
トカエフ氏は治安部隊を投入してデモ隊200人以上を拘束する一方、価格統制の再開を表明。しかしデモは収まらず、同国最大の都市アルマトイでは5日までに約400の商業施設が被害を受け、多数の警察車両や救急車が燃やされた。デモ隊はトカエフ氏の自宅や市庁舎も占拠した。