岸田文雄首相は6日、オーストラリアのモリソン首相とテレビ会議方式で会談した。両首相は自衛隊と豪軍が共同訓練などで相互訪問する際の手続きを簡素化する円滑化協定に署名した。日米地位協定を除き、日本が2国間で相手国軍の法的地位を定めた協定に署名したのは初めて。また、経済安全保障分野での協力強化や、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調することなどを盛り込んだ共同声明も発表した。
岸田首相は会談で「オーストラリアとの安全保障協力関係は、米国以外のパートナーとの協力のモデルになっている」と強調。モリソン氏は「日本はアジア地域で最も密接なパートナーとなっている」と述べた。
両首相は、東・南シナ海における中国の「威圧的な一方的行動」に強く反対を表明。新疆ウイグル自治区における人権侵害に「深刻な懸念」を共有し、香港における自由の侵害に「重大な懸念」を表明した。北朝鮮による核・ミサイル開発を非難し、拉致問題の即時解決を求めた。
経済安保については、①違法な技術移転への対処②強靱(きょうじん)なサプライチェーン(供給網)構築③重要インフラの保護-での協力を強化することで一致。サイバーや資源安全保障の分野でも連携強化を確認した。中国がオーストラリア産食品の輸入制限を行っていることを踏まえ、経済的威圧に対抗することでも足並みをそろえた。
また、平成19年に両政府がまとめた安全保障協力に関する共同宣言について、改定に向けた作業を進めることで合意。両首相が担当部局に作業を指示し、「可能な限り早期」に発表するとした。会談は首相が訪豪して行われる予定だったが、「国内の新型コロナウイルス対策に万全を期す」として断念。テレビ会議方式に切り替えた。