勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(384・完)

ブレーブスの雄姿 もう一度見たい

平成23年5月、懐かしい阪急ブレーブスのユニホームで並んだ(左から)福本、加藤、山田の3人衆=ほっともっとフィールド神戸 (白鳥恵撮影)
平成23年5月、懐かしい阪急ブレーブスのユニホームで並んだ(左から)福本、加藤、山田の3人衆=ほっともっとフィールド神戸 (白鳥恵撮影)

■勇者の物語(383)

昨年(令和2年)6月1日から始まった『勇者の物語』。「日本に職業野球を―」という創業者・小林一三の〝夢〟を、多くの「勇者」たちが懸命に実現した物語も、この第384話で最終回である。

第一の功労者は昭和10年1月、米国出張中の小林から「(西宮)北口運動場併に職業野球団設置、至急計画願ひ渡し」と指令を受け、球団結成のために日本中を奔走した村上実であろう。

当時、村上は阪急入社4年目。百貨店の洋家具売り場に勤務していた(第27話参照)。選手集めから始めた村上はのちに球団代表となり、監督や初代OB会長も務めた。その村上が昭和63年のオリックスへの〝身売り〟のあと、OB会総会でこう語った。

「阪急ブレーブスが無くなり、みなさんの寂しさや悔しさはようくわかる。けれどこれからはオリックスの人たちと仲良くやってください。何を言われようが、阪急は球団を売ってしまったんですから…。オリックスに面倒を見てもらって『阪急ブレーブス』の歴史を、『ブレーブスOB会』を残してください」

加藤英司はその日の「村上さんの言葉には重みがあった」という。

「村上さんのいう通り、阪急はブレーブスを売ったんやもんな。買ったオリックスがバファローズにしたからというて、文句は言えん。実際、オリックスに面倒を見てもらわなOB会は維持でけへんのやから」。それが現実だった。

連載の最終回にあたり、ヒデさんとフクさんに〝夢〟を聞いた。

「夢かぁ。OB戦をしたいな。OB会長の山田が何度も阪神に申し込んでるんやが実現せぇへん。近鉄OBも南海OBもみんなしたいと思ってるんとちゃうか。体が動くうちに…」。これがヒデさんの夢だ。関西に生きた5球団(オリックス、阪神、阪急、近鉄、南海)でOB戦。懐かしのユニホームのレプリカを売り出し、グラウンドで名選手たちのサイン会に撮影会。あぁ、楽しそうや。そう、そう、フクさんの夢は?

「ブレーブスの復活。それしかあらへん。無理? そやから夢なんや」

それはファンの夢でもある。いつか実現することを祈って「勇者の物語」の幕を下ろそう。(完・敬称略)