ビブリオエッセー

掘り出したペシミズム 「骨」小松左京

十代の頃、書店で目にした短編集。パラパラと飛ばし読みをして引き込まれ、購入した。40年以上も昔のことだ。以来、何度も読んだが、『日本沈没』のドラマ化などで思い出し、断捨離中の部屋の奥から引き出した。

「骨」はその中の1編、地面を掘る話だ。湧き水を利用していた主人公がある日、思い立って井戸掘り職人に仕事を頼む。しばらく掘り進むと職人が叫んだ。「いけませんや、旦那。―悪いものが出やした」。化石化した人骨だった。次にナウマン象の化石が出てくる。

奇妙な場所だった。掘ると次々に骨が見つかるのだが不思議なことに縄文、弥生と下層の方が新しい。やがてとてつもない数にのぼっていく。第二次大戦だろうか、核兵器や毒物による被害を受けた人骨も出土する。今は自分で掘り進む主人公が最後に見つけたものは…。

仁徳陵の近くに私の通っていた中学があり、地元には弥生の遺跡もあって大学の先生が発掘指導をしているのをよく見かけた。先生や学生がいないのを見はからって遺物を集めたり、夏休みには発掘ボランティアに参加したこともある。今も石槍などを手元に保存している。

「骨」に魅せられたのは中高時代からの考古学への興味ともつながっていたかもしれない。だが、この短編はゾッとする物語だった。

その頃はエンタメ系の小説を読みまくっていて、特に軽めのショートショートがお気に入りだった。ところが初めて読んだ小松左京の短編から人間に対するペシミズムの気分や文明批判を知った。それは単純なSFでもホラーでもない。衝撃を受け、読書傾向もシリアスなものに変わっていった。この作品のおかげである。

大阪府高石市 柿本和雄(63)

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