豪に「地の利」 戦略的協力も可能に 円滑化協定

オンラインで日豪円滑化協定署名式に臨む岸田文雄首相とスコット・モリソン豪首相=6日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)
オンラインで日豪円滑化協定署名式に臨む岸田文雄首相とスコット・モリソン豪首相=6日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)

日豪両政府が自衛隊と豪軍の相互訪問に関する円滑化協定に署名したことで、両国の防衛協力をさらに強化する素地が整った。これまでは共同訓練や人道支援・災害救助など友好関係の深化を目指す活動が中心となっていたが、日本側には中国の脅威を踏まえ、オーストラリアの地政学上の利点を活用した戦略的な協力を求める声もある。

円滑化協定は、豪軍が日本国内で活動する際や、自衛隊がオーストラリアで活動する際に、課税免除や事件・事故の裁判管轄権などを定める。これまで相互訪問のたびに両国間で調整していたため、準備に時間がかかっていた。今後は共同訓練や災害救助などが迅速に行える。日本側担当者は「千人、2千人の大規模なオペレーションも推進が可能になる」と語る。

「日豪円滑化協定の署名と今回の会談により、日豪関係が一層飛躍していくと確信している」

岸田文雄首相は6日のモリソン首相との会談で、こう強調した。両政府は今後、具体的な防衛協力の在り方を協議し、安全保障協力に関する共同宣言をまとめる方針だ。

日本側にはオーストラリアの「地の利」を生かした協力への期待もある。中国は射程1500キロ超の東風(DF)21Dや、約4千キロのDF26など中距離ミサイルを大量配備しており、日本列島を射程に収めている。これに対し、オーストラリアはほぼ射程圏外にあり、自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35など高価な装備をオーストラリアに訓練などで展開することで、仮に有事となった場合でも、戦闘初期の打撃を回避できるというわけだ。

日豪間では令和元年に豪空軍のFA18戦闘機が北海道の千歳基地を拠点に航空自衛隊戦闘機と共同訓練を行っているが、戦闘機部隊の相互訪問は実績に乏しい。防衛省関係者は「戦闘機を持っていくとなれば、手続きも煩雑になる」と説明するが、円滑化協定が発効すれば柔軟な運用が可能となる。政府は年末に国家安保戦略など戦略3文書の改定を控えており、日豪協力の強化を組み込んだ防衛態勢の構築も考えられる。(杉本康士)

自衛隊・豪軍 相互訪問円滑化 首脳会談 協定署名