充実した練習環境
29年7月にグランドオープンした練習拠点「いわきFCパーク」は、グラウンドやトレーニングジムなどを備え、JFLでは屈指の練習環境を備える。さらに、徹底した食事管理と、科学的な根拠に基づく最新のフィジカルトレーニングも積極的に導入した。
充実した練習環境と選手の強化策が確実に実を結び、県社会人サッカー2部リーグから昇格を重ねてわずか6年でJリーグの舞台にたどり着いた。
希望の光
「浜を照らす光であれ」
昨年11月3日、いわきFCがJ3昇格を決めた試合が行われたJヴィレッジスタジアム(福島県広野町)に、こんな横断幕が初めて掲げられた。
図柄は灯台のシルエット。葛尾、双葉、大熊、楢葉、川内、富岡、広野、いわき…。灯台から伸びる光の中に、いわきFCのホームタウン8市町村と浪江の文字が並んでいた。列記された市町村は、いずれも東日本大震災、東京電力福島第1原発事故で大きな被害が出たエリアだ。
横断幕を作った自営業の原恵司さん(51)は、いわき市に住むチーム創設時からのサポーター。原さんは「いわきFCが、まだ(震災と原発事故の影響で)人が戻っていない地域を照らしてくれる希望の光に思えた。そう信じて横断幕を作った」と話す。
地域のために
いわきFCを運営するいわきスポーツクラブの大倉智社長(52)は、この横断幕が強く印象に残った一人だ。
「被災地に誕生したサッカーチームの応援に出かけ、仲間が増えたり、昔の友達に再会したり、そこで出会い結婚した人もいる。非日常的な楽しい場所ができて喜んでくれた人もいる」。サッカーで創出した世界が、地元住民たちの「希望の光」になっている手応えを感じている。
今後も地元に根付いた活動に力を入れることは、チームの共通認識でもある。昨季限りで監督を退任し、今季はトップチームと子供たちを育成するアカデミー部門の総責任者としてクラブを支える田村雄三スポーツディレクター(39)は、先月5日に行われた昨季最終戦後の記者会見で「今はコロナ禍だが、地元の幼稚園や商店街などに行って活動したい。地域のために何ができるかを考えたい」と強調した。