「浜を照らす光に」 6年でJ3に昇格 いわきFCの挑戦

優勝セレモニーで歓喜するいわきFCの選手ら=昨年12月、福島県いわき市(芹沢伸生撮影)
優勝セレモニーで歓喜するいわきFCの選手ら=昨年12月、福島県いわき市(芹沢伸生撮影)

福島県いわき市のサッカークラブ「いわきFC」 が昨年12月、J3への昇格を決めた。本格的な始動からわずか6年。チーム設立当初の理念である「サッカーを通じて被災地の復興と成長に貢献する」を体現する形でのスピード昇格だ。震災と原発事故の発生から丸11年となる今年、チームは新たなステージに挑む。その軌跡を振り返るとともに、チームが目指す未来像を取材した。

浜通りに戻ったサッカー

会場周辺は、試合開始前から熱気に包まれていた。昨年12月5日、福島県いわき市のいわきグリーンフィールドで行われた地元のサッカークラブ「いわきFC」の昨季最終戦のFC大阪戦には、シーズン最多となる2451人の観客が詰めかけた。日本フットボールリーグ(JFL)では異例ともいえる人数だった。

昨季、JFLで優勝を果たし、今季は初めてJ3に参戦することになったいわきFCは、FC大阪に3-0の快勝。J3昇格に花を添える形で有終の美を飾った。

シーズン最多入場者を集めた最終戦で、いわきFCは谷村海那(右から2人目)らが3得点し快勝し、サポーターを沸かせた=昨年12月、福島県いわき市(芹沢伸生撮影)
シーズン最多入場者を集めた最終戦で、いわきFCは谷村海那(右から2人目)らが3得点し快勝し、サポーターを沸かせた=昨年12月、福島県いわき市(芹沢伸生撮影)

地元サポーターの感慨もひとしおだ。いわき市に住むチーム創設時からのサポーター、長谷川守さんは「東日本大震災前はマリーゼ(東京電力女子サッカー部)の試合をよく見ていたが、東京電力福島第1原発事故で、浜通りからサッカーがなくなった。そこにできたのがいわきFC。スポーツで浜通りを盛り上げるという考え方がうれしかった」と話す。

いわきFCサポーター団体連絡協議会の野田昇会長(60)は「サッカーだけでなく、街をにぎやかにしてくれる存在。試合前にサポーターが集合して楽しんだり…。みんなの応援が今回の結果につながった」と熱く語る。

被災地に貢献を

震災と原発事故で甚大な被害を受けた福島県の浜通り一帯を本拠地にするいわきFCは、平成27年設立の「いわきスポーツクラブ」が運営しており、親会社は米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店「ドーム」(東京)。平成28年から本格的に活動をスタートさせた。

いわきFCの誕生は、震災と原発事故被災地の雇用創出などを目指し、ドームがいわき市に物流倉庫を作ったのがきっかけだった。ドームの安田秀一最高経営責任者(CEO)は、倉庫が建つ広い敷地を利用し、サッカーチームを作って被災地に貢献することを考えた。

安田CEOは、Jリーグ・湘南ベルマーレの大倉智社長(52)=当時=に相談。知人でもある安田CEOの思いに共感した大倉社長は、いわきスポーツクラブの社長に就任した。

「被災地にゼロからサッカーチームを作るのは簡単ではない。ただ、スポーツの力で何かが生まれたらすごいと思った」。大倉社長は、当時の心境をこう振り返る。