〝燃えない〟木材で中高層建築推進 高い断熱性・CO2排出半減・工期短縮

三井ホームの木造マンション「MOCXION INAGI」=東京都稲城市(同社提供)
三井ホームの木造マンション「MOCXION INAGI」=東京都稲城市(同社提供)

中高層建築物の木造化が進んでいる。耐火性や強度の基準を満たした木質建材の開発が進み、木造化が可能になった。木は成長の過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するため、建材として利用すれば炭素を固定化できる。鉄筋コンクリート(RC)造りに比べ断熱性も高く、エネルギー消費量を削減できるメリットもあり、脱炭素の潮流の中で不動産デベロッパーも木造を選ぶケースが増えている。

ゼネコン大手の竹中工務店は、壁や柱など主要な構造物に木材を使用し、RCなどと組み合わせた「ハイブリッド木造」と呼ばれる中高層建築を推進している。地上12階の独身寮である「フラッツ ウッズ 木場」(東京都江東区)など、これまでに約20棟を建設した実績を持つ。

三井ホームは昨年11月、東京都稲城市に5階建ての木造賃貸マンションを完成した。高い強度が必要な1階部分はRC造りだが、2~5階部分を木造とした。木造のため断熱性が高まり、一般的な賃貸住宅より電気など生活する上で必要なエネルギー消費量は30%低減。木材は鉄やコンクリートに比べ製造や加工に要するエネルギー消費量が少なくて済むため、建設時のCO2排出量も半減できたという。

竹中工務店が建設した「フラッツ ウッズ 木場」=東京都江東区(同社提供)
竹中工務店が建設した「フラッツ ウッズ 木場」=東京都江東区(同社提供)

建物自体が軽いため、地盤改良が不要になるメリットもあり、工期を短縮できる。同社では「木で建てない理由はない」とし、木造マンションを「MOCXION(モクシオン)」ブランドで展開していく。

中高層建築物の木造化を可能にしているのは、耐火性能や強度を高めた木質建材の開発が進んだことが背景にある。

例えば、竹中が開発した「燃エンウッド」と呼ぶ耐火集成材だ。国産木材を貼り合わせて強度を高めた集成材をモルタルなどを使った「燃え止まり層」で覆い、その周りをさらに木材で囲う3層構造を採用。燃えても燃え止まり層で火が消え、中心部の集成材は建物の荷重を支え続ける。「2時間耐火」までの認定を得ている。

竹中工務店の耐火集成材「燃エンウッド」の内部構造。燃えても中間のモルタル層で自然に火が消える(同社提供)
竹中工務店の耐火集成材「燃エンウッド」の内部構造。燃えても中間のモルタル層で自然に火が消える(同社提供)

中高層建築物の木造化を進めるため、その担い手を広げようという取り組みも出てきた。

木造注文住宅を手掛けるアキュラホーム(東京都新宿区)は、さいたま市西区に建設する本社ビルを純木造の8階建てビルとすることを決めた。非住宅建築物の木造化を進めるには、全国の工務店が普及価格帯で施工できるようになる必要があると判断。そのプロトタイプ(手本)として新本社ビルを地元工務店と建てることにしたという。5月にも着工し、令和6年9月の完成を目指している。

課題はコストだ。耐火集成材などのコストがまだ高く、竹中によると、ハイブリッド木造では全体の建築コストは10~15%ほど高くなるという。ただ、竹中で木造・木質建築統括を務める松崎裕之参与は「需要が増えていけばコストはこなれていく」とみる。条件が合えば補助金を受けることもでき、中高層建築物木造化の後押しになりそうだ。

(高橋俊一)