金正恩氏、新年早々に新兵器誇示 手詰まり感拭えず

朝鮮労働党中央委員会総会に臨む金正恩党総書記=2021年12月、平壌(朝鮮中央通信=共同)
朝鮮労働党中央委員会総会に臨む金正恩党総書記=2021年12月、平壌(朝鮮中央通信=共同)

北朝鮮が新年早々に弾道ミサイルとみられる飛翔(ひしょう)体を発射したのは、国際社会に存在感を示し、国内に向けた国威発揚の材料として新型兵器による武力示威しか持ち合わせない金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の手詰まり感を反映しているようだ。

「近代戦に相応した威力ある戦闘技術機材の開発、生産を力強く進めるべきだ」。金氏は昨年12月31日まで5日間開かれた党中央委員会総会でこう新兵器開発に拍車を掛けるよう強調した。この言葉をミサイル発射という行動で真っ先に見せつけたといえる。

毎年年始に党の重要会議の演説内容や「新年の辞」の形でその年の施政方針を表明してきた金氏だが、今年は様相が違った。総会で「対外事業の原則と戦術の方向」を自ら提示し、幹部らに外交政策を討議させながら具体的な対外路線については公表を控えさせた。

韓国・高麗(コリョ)大の南成旭(ナム・ソンウク)教授は、台湾問題などで米中対立が深刻化し、北京五輪や韓国大統領選も控えて周辺情勢が複雑化する現状で対外方針を公開するのは得策ではないと判断した可能性を指摘する。とはいえ、米中を含む国際社会の北朝鮮への関心が薄まる中、「ミサイル発射で存在感を示す必要に迫られていた」とも南氏は分析する。

金氏は総会で農業振興策について雄弁に語り、北朝鮮メディアは総会報道の半分以上を農業問題に割いた。金氏は「人民が最も解決を待つ切実な課題」とも力説。新型コロナウイルス対応の国境封鎖や国際社会による制裁で経済難が続く中、「食の問題」を放置すれば体制が揺らぐとの危機感の表れとみられる。

昨年、ミサイル発射を繰り返すなどした新兵器開発については「われわれの軍事力の先進性と近代性を誇示したことは、この年の成果で極めて重要な地位を占める」と主張した。昨年を「偉大な勝利の年」と総括しつつも、内政や外交で目に見えた成果はなく、新兵器開発しか実績を語れない苦しい内情が浮かぶ。今年も兵器実験の継続は確実で、日本への脅威が一層高まることを意味している。(ソウル 桜井紀雄)