核リスク低減への対話は不透明 保有5カ国声明、相互不信強く

米ニューヨークにある国連本部の総会議場(国連提供・共同)
米ニューヨークにある国連本部の総会議場(国連提供・共同)

【ニューヨーク=平田雄介】米国、英国、フランス、中国、ロシアの5核保有国は3日、「核戦争に勝者はいない」とし、核保有国間の戦争回避とリスク低減を「最も重要な責務」とする共同声明を発表した。米露は軍備管理などを通じて衝突リスクを抑える「戦略的安定」に向けた対話を昨年に続き、9~10日に開催。米中も模索する。しかし、米国と中露の相互不信は強く、5カ国の対話が前進するかは不透明だ。

共同声明は核拡散防止条約(NPT)で核保有が認められた5カ国として発表した。核兵器保有の目的を「防衛と侵略の抑止、戦争防止」に限るべきだとし、衝突を避けるため、「2国間と多国間の取り組みを引き続き追求する」とした。

5カ国はウクライナや台湾の情勢をめぐる緊張を抱える中、新型コロナウイルス蔓延(まんえん)の影響で4~28日の予定が延期されたNPT再検討会議で、リスク低減の課題を取り上げる計画だった。昨年12月には再検討会議の準備会合を開き、核に対する立場を相互に確認。終了後に発表した声明で、5カ国の対話を「リスク低減の有意義な手段」と位置づけ、再検討会議でのイベント共催も予告していた。

3日の共同声明では「核兵器のない世界という究極の目標」に向け「全ての国家と協力する」とも強調し、NPTが定める軍縮に関し、誠実に交渉を行う義務も確認した。

ただ、近年停滞してきた軍縮の取り組みが進展するかは見通せない。

ロシアは米ミサイル防衛の突破を目指し、新型兵器の開発を進める。極超音速兵器を配備し、事実上射程制限のない大型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が年内に量産開始とされる。中国は保有する核弾頭数を増やし、ICBMの多弾頭化や極超音速兵器の開発を進めているとされる。

NPTからの「脱退」を表明した北朝鮮は核・ミサイル開発に邁進(まいしん)し核不拡散は後退している。イランは再建へ向け交渉中の核合意が規定する上限を大幅に超えてウラン濃縮を進め、核兵器の保有が懸念される。

安全保障環境が悪化する中、バイデン米政権は策定中の「核態勢の見直し(NPR)」で核兵器の役割縮小を模索しつつも、極超音速兵器の開発も行う。英国は保有核弾頭数の上限を引き上げる方針を示した。

このほか、NPTに参加していないインド、パキスタン、イスラエルも核兵器を持つとされる。5カ国による対話が実現しても、軍備管理と軍縮による「核兵器なき世界」を実現するまでの道のりは険しく遠い。