首相、参院選へ向け勝負の7カ月 感染抑制がカギ

岸田文雄首相
岸田文雄首相

岸田文雄政権の明暗を分ける勝負の7カ月がスタートした。新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」を抑え、7月までに行われる参院選を制すれば、国政選挙に左右されずに自身が掲げる政策実現に集中できる「黄金の3年」を手に入れられる。だが、感染爆発を招けば参院選を待たずして政局に発展する危険性もはらんでおり、しばらくは安全運転を余儀なくされそうだ。

「慎重に取り組まなければならないのは新型コロナ対応だ」

首相は4日、年始恒例の伊勢神宮参拝後の記者会見でこう語り、最優先課題としてオミクロン株の制圧を改めて掲げた。同時に、水際対策から国内対策に重点を移すとも説明した。

コロナ対策の成否が政権の命運を握っていることは首相自身がよく心得ている。

菅義偉前政権は一昨年9月に7割近い内閣支持率で発足したが、感染者数の急増とワクチン接種の遅れ、緊急事態宣言の連発で急落した。その中で行われた自民党総裁選に出馬し、「菅降ろし」に踏み切った形となった首相は「年明けは楽観できない」と周囲に語り、足元の状況に危機感を募らせる。コロナ対策で失敗すれば、参院選前に「岸田降ろし」に発展しかねない。

実際、自民党内に政局の火種はある。首相と距離を置く参院議員は「コロナ対策で失敗したら、参院選は『首相では戦えない』という声が必ず出る」と語る。党内には、北京冬季五輪の「外交的ボイコット」表明が遅れた首相の対中姿勢や経済政策を疑問視する声もあり、政局の発火点はいくつもある。

過去には、政権選択選挙ではない参院選で敗北し、引責辞任した首相は少なくない。裏を返せば、首相がオミクロン株の感染拡大を抑制した上で参院選を無難に乗り切れば、衆院の任期を3年以上残す中で次の衆院解散・総選挙のフリーハンドを握ることになり、政権の求心力が急速に増す環境が整うことになる。

首相は年頭の記者会見で、今年の干支(えと)である「壬寅(みずのえとら)」の意味を説きながら、自らに言い聞かせるようにこう語った。

「『壬寅』は新しい動きが胎動し、大いに伸びるという意味を持つ。大いに伸びるときには普段以上に慎重でなければならない」(千田恒弥)

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