韓国で記者や野党議員への通信照会乱発 文氏肝煎りの捜査機関

3日、韓国の大統領府で「新年の辞」を発表する文在寅大統領(ロイター)
3日、韓国の大統領府で「新年の辞」を発表する文在寅大統領(ロイター)

【ソウル=桜井紀雄】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が掲げる検察改革の柱として創設された捜査機関が、多数の記者や野党議員の通信情報を照会していた問題が波紋を広げている。複数の日本メディアの記者も対象に含まれていた。この機関の設立に反対してきた野党側は「不正査察だ」として文政権への批判を強めている。

検察の政治介入を批判してきた文政権は昨年1月、政府高官や国会議員らを独立して捜査する機関、「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」を発足させた。

複数の韓国メディアによると、4日現在、公捜処が保守系最大野党「国民の力」の国会議員約90人や同党の大統領選候補、尹錫悦(ユン・ソンヨル)前検事総長と、その妻の通信情報を照会していたことが判明している。対象は同党国会議員の85%に上る。

照会を受けた記者は160人以上で、記者の家族も含まれていた。朝日新聞や毎日新聞、東京新聞、日本の民放テレビ局が自社の韓国人記者らが対象になっていたと明らかにしている。産経新聞も通信会社に照会の有無を問い合わせている。

国民の力は「無差別な民間人査察だ」と批判し、公捜処トップの金鎮煜(キム・ジヌク)処長の辞任を求めている。中道系野党「国民の党」代表で大統領選候補の安哲秀(アン・チョルス)氏も「大統領になれば、廃止する」と主張。公捜処トップを大統領が任命し、野党の反対も十分反映されないことから「政権寄りの機関だ」と批判してきた野党側には、公捜処廃止論を勢いづかせる狙いがある。

これに対し公捜処の金処長は「合法的だ」と反論。昨年上半期に公捜処による照会が135件だったのに対し、検察は約59万件、警察は約187万件に上ったと指摘し、既存の捜査機関がはるかに多いと主張した。ただ、野党は事件1件当たりの照会数は公捜処が多いと説明。むやみに照会を乱発したのは公捜処の「経験不足と無能さ」から来ているとの指摘もある。

韓国では、捜査機関が捜査対象の通話相手を知るため、電気通信事業法に基づき、通信会社に対して裁判所の許可なしに電話番号から使用者の氏名や住所、住民登録番号を照会できる。

公捜処はこれとは別に、裁判所の令状を取ってテレビ朝鮮や中央日報といった複数メディアの記者の通話記録を押収していた実態も判明している。これらの記者は公捜処について批判的に報じていたとされ、メディア側は「言論の自由への侵害だ」として、法律の見直しなどを求めている。