江戸時代、鎖国のころ。唯一、世界に開かれていた「窓」が長崎だ。海外で流行する感染症は長崎から国内に広がり、予防や治療法などの西洋医学もまた、ここから普及した。1857年に設置された医学伝習所の流れをくみ、感染症研究をリードしてきた長崎大に昨年夏、新たな実験棟が竣工(しゅんこう)した。
鉄筋コンクリート5階建て、そばにある教会「浦上天主堂」と調和する意匠だが、天主堂を象徴する優美な窓はない。
厳重な構造は安全性を担保するためだ。エボラウイルスなど感染力が強く致死性の高い病原体を扱う国内2カ所目の「バイオセーフティーレベル(BSL)4施設」として、本格稼働に向けた準備が進む。