街の書店、コロナ特需に陰り SNSとの相乗効果カギ

真光書店のレジ近くには、来年1月に選考が行われる直木賞候補作が並んでいた=東京都調布市
真光書店のレジ近くには、来年1月に選考が行われる直木賞候補作が並んでいた=東京都調布市

コロナ禍の巣ごもり消費で息を吹き返した街の書店の好調ぶりに、陰りが出ている。リモートワーク関連書の需要が一段落したことや、国内旅行やイベントなど別の娯楽に人々の目が向き始めたことを背景として指摘する声もある。在宅時間の増加で本と書店の価値が再認識された「特需」は一服しつつあり、コロナ後を見据えた模索が続く。

「夏以降の売り上げは特に厳しい。以前の右肩下がりに戻っている」。京王線の調布駅近くにある真光書店(東京都調布市)の矢幡秀治社長はそう振り返る。

創業は昭和43年。約400平方メートルの売り場に文芸書や漫画、雑誌などがバランスよく並ぶ。近隣の学生向けに理工書も豊富にそろえており、地域住民に親しまれてきた街の書店だ。

長く紙の本や雑誌離れに苦しんできたが、コロナの感染拡大で最初の緊急事態宣言が出た令和2年の4、5月には大型商業施設に入る書店が休業したこともあり、客が殺到。営業時間を大幅に短縮したのに前年の倍を売り上げる日もあった。だが、昨年は苦戦が続いた。矢幡社長は「人出は戻っているが店にはなかなか入ってもらえない。コロナ禍を経て紙から電子への移行が進んだ印象も受ける」と話す。

一部の中小書店に限った現象ではない。出版取次大手の日本出版販売(日販)が行った令和2年の年間書店店頭売り上げ調査は、前年比104・3%を記録。平成12年の集計開始以来初めて前年を上回った。「コロナ禍の巣ごもり需要もあり、本の価値が見直された。家族で書店を訪れ、社会現象化した大ヒット漫画『鬼滅の刃』をまとめ買いする例も多く、客単価が上がったのも大きかった」(日販の担当者)という。ただ、令和3年は5月以降前年比マイナスが続き、10、11月は同80%台に。年間を通しても前年割れに転じる可能性が高い。ヒット作が相次ぐ漫画や児童書などは依然好調だが、「ZOOM」の使い方などを解説するリモートワーク関連書が売れたビジネス書は低迷しており、コロナの影響が一巡したともいえる。出版科学研究所の久保雅暖(まさはる)さんも「感染状況が落ち着いてからはイベントや飲食、国内旅行などにお金と時間を費やす動きも出始めた。電子書籍やネット書店の需要は高いが、街の書店は苦しい」と話す。

一方で、動画投稿アプリ「TikTok」で紹介された筒井康隆さんの既刊文庫「残像に口紅を」が、10~20代の読者を掘り起こして増刷を重ねるなどSNS発のヒットも目立つ。「クレジットカードをあまり持たない若年層は、書店を訪れて本を購入するケースが多い。新しい客層を取り込む方策はまだある」(出版関係者)との声も。SNSとの相乗効果に着目した集客策が今後のカギになりそうだ。(海老沢類)