年が明けても、新型コロナウイルス禍が経済の重しとなっている状況に変わりはない。
オミクロン株の蔓延(まんえん)で感染第6波が深刻化しないか。行動制限が強まることはないか。あるいは欧米や中国などの海外経済がコロナ禍で再び悪化し、頼みの外需に期待が持てなくならないか。
令和4年の日本経済も、コロナ禍に左右される不確実性の高さから逃れられそうにはない。
ただし、リスクを減らすことはできる。感染拡大を抑制することは大前提である。むしろ、その徹底が、最も効果的で優先すべき経済対策だと言い換えてもいい。
家計の貯蓄増を消費に
感染力の強いオミクロン株の市中感染が広がりつつある中、いきなりゼロコロナを目指すのは無理がある。大切なのはコロナといかに共存するかだ。昨秋以降の行動制限緩和で再開してきた経済活動を維持できるかどうかである。
そのためにも、医療崩壊に陥るような深刻な事態だけは回避しなくてはならない。3回目のワクチン接種を可能なかぎり前倒しすべきは当然だ。飲み薬の供給にも万全を期したい。政府が果たすべき責務は引き続き大きい。
コロナ禍に伴い人為的に消費を抑制してきたことなどにより、貯蓄が急増している。昨年9月末時点で2千兆円目前まで膨らんだ家計の金融資産残高は、その半分以上が現金・預金だ。
内閣府によると、2年度の家計貯蓄の増加額は29兆円近くにのぼる。景気を着実に回復させていくためには、家計の貯蓄を「リベンジ消費」につなげる流れを確かなものとしなければならない。
政府は早ければ今月にも観光支援策「Go To トラベル」を再開することを検討している。旅行需要の喚起や地域経済の活性化に即効性が見込める政策だが、実施する際には、感染状況を慎重に見極めてもらいたい。
行動制限の再強化が必要な事態を招くことになれば、元も子もないからだ。家計にため込まれた貯蓄を生かす機会も失われる。
コロナ時代の経済には感染拡大以外にも懸念がある。とりわけ資源価格などの世界的な高騰や、これに追い打ちをかけて輸入物価を押し上げる円安がそうだ。
昨年11月の国内企業物価指数が前年同月比で9・0%上昇となるなど、企業間で取引される価格はすでに極めて高い水準だ。このコスト増が企業収益を圧迫する。さりとて販売価格に転嫁されれば家計には大きな打撃となる。
インフレが顕著な欧米と比べると日本の消費者物価はなお低水準で、11月の消費者物価指数上昇率は0・5%だ。もっともこの数値は、携帯電話の通信料値下げで1・5ポイント程度押し下げられたとされるから、この影響を除けば日本でも物価の騰勢は明らかだ。