岩を高温で“粉砕”する新しいトンネル掘削機、米スタートアップが開発中

トンネルを掘削する際に、1,000℃近い高温の熱と気体で粉砕する新しい技術の開発に、米国のスタートアップPetraが取り組んでいる。その目標は、高圧電線などを地中に埋設するコストを大幅に下げることで、自然災害に強いインフラ網を構築することにある。

TEXT BY KHARI JOHNSON

WIRED(US)

米国政府の研究者は1970年代、原子力を使った掘削機で岩盤を掘り進むことを思い描いていた。その掘削機は、潜水艦が水中を進むように地球の上部マントルを掘り進んで国家の安全保障に寄与し、地震と火山もコントロールできるようになるかもしれない──そう考えたのである。

その10年以上前には、ロスアラモス国立研究所の科学者の実験によって岩石を溶かすドリルが開発されており、一部の企業が注目していた。科学者の論文によると、「アポロ宇宙船の飛行で月面ドリルとして使用することが真剣に検討された」という。だが、このアイデアが試作品の段階を超えることはなかった。

ところが、この着想に触発された創業3年目のスタートアップのPetraが、岩を削らずに“切り裂く”技術を開発しているという。同社はカリフォルニア州オークランドの工業団地で2018年、まずプラズマトーチを使って岩を溶かしながら切り裂くテストを実施した。その後、より大きなプラズマトーチを使い、華氏10,000度(約5,538℃)を超える温度で岩を切り裂いた。

のちにPetraはプラズマトーチを使うことをやめ、華氏1,800度(約982℃)を超える熱と気体を組み合わせて岩を粉砕する方式に乗り換えた。小さな棒に取り付けられたセンサーが岩石に触れはするものの、掘削は熱と気体によるものだ。Petraは、テスラの共同創業者のひとりが開発に協力したこの技術を利用し、公益事業者が電線などを地下に埋設できるくらいまで岩盤掘削のコストを下げたいと考えている。

こうしたなか11月に発表されたある研究によると、地下に埋設された電線に接触する事故が米国だけでも年間610億ドルの損害をもたらしており、公共の安全に対するリスクが高まっているという。Petra最高経営責任者(CEO)のキム・エイブラムスは、電線の埋設コストを50%から80%削減することで、現実的な選択肢にしたいと考えていると語る。気体と熱の混合物については独自に開発したものであることから、権利の関係で詳細は話せないという。

「いま実用化されている方法はどれも高接触式で、接触した地面を粉砕して除去するものばかりです」と、エイブラムスは言う。「これはまったく新しい掘削方法なのです」

北米トレンチレス技術協会(North American Society for Trenchless Technology)をはじめとするトンネル掘削団体の幹部たちは、非接触方式で硬い岩盤を掘削するやり方を、Petraは初めて開発していると説明する。そのひとりであるボブ・グッドフェローは、地下建設と設計のプロジェクトに30年間携わり、現在はロサンジェルスの地下鉄システムに取り組んでいる。グッドフェローが経営するAldeaは、Petraの初期システムのテストに協力している。

「こういうものは、これまで一度も見たことがありません」と、グッドフェローは言う。「これまでにも原子力を使ったトンネルのボーリングマシンや非接触型トンネル掘削などの話はありましたが、試作機の話にすぎませんでした。実際に本当に実用化しようとしているのは、わたしの知る限りはPetraが初めてです」