公明党が夏の参院選に向けて危機感を強めている。昨年末、公明の衆院議員だった遠山清彦元財務副大臣らが貸金業法違反罪で在宅起訴されたのを受けて野党は17日召集予定の通常国会でも追及する構えで、党の持ち味である清廉なイメージが損なわれかねないためだ。自民との距離も浮き彫りになり、党勢の立て直しに向けた戦略が問われている。
「公明党がいる連立政権だからこそ政治が安定し、課題を着実に乗り越える。その先頭に公明党が立っていく」。山口那津男代表は2日、新春恒例の東京都内の街頭演説でこう訴えた。
公明は昨年、〝厄年〟のような事態が相次いだ。
遠山氏は緊急事態宣言下で東京・銀座のクラブを訪問したなどとして昨年2月、議員辞職。先の衆院選で公明は前回の29議席を上回る32議席を確保したが、公示前の4倍近い41議席を獲得した日本維新の会に第3党の座を奪われた。斉藤鉄夫国土交通相は衆院選の最中に開いた集会参加者への現金支払い問題が報じられたほか、国交省による建設工事受注動態統計の書き換え問題で釈明に追われ、政権批判の矢面に立たされた。
岸田文雄政権下では自公のきしみも目立つ。衆院選で公明が公約として掲げた18歳以下への10万円相当の支給方法をめぐっては、現金とクーポンの併用を決めた政府に対し、複数の自治体がクーポンに伴うコスト増に猛反発。これが自民と連立を組む公明への批判にもつながった。
最終的に政府は現金の一括給付も認め、公明の主張に近い形で決着した。山口氏は一連の迷走を念頭に、周囲に「『公明の言う通りになったね』といわれる」と自嘲気味に語る。
自公連携のカギといわれる両党の幹事長と国対委員長が会談する「2幹2国」も定例化されていない。平成24年以降の安倍晋三政権や菅義偉政権では当時の二階俊博幹事長主導で週1回程度開かれ、政権運営を下支えした。
自民内では「(2幹2国は)相互の信頼関係を保つために必要だ。随時開催では阿吽(あうん)の呼吸ができなくなる」(幹部)と危機感を漏らす。一方、公明側は「一致結束して臨む意味では大変意義がある」(石井啓一幹事長)とするが、定例化には言及しておらず、自民との溝がにじむ。
公明は参院選比例代表での得票目標を800万票としているが、目標達成は自民との協力が前提だ。憲法改正や防衛などで自民と維新がさらに接近すれば埋没しかねない。政権与党の一角である公明にとって今年は正念場となる。(児玉佳子)