令和4年の関西

新みやげ、移住、グランピング‥観光復活に向けのろし

湯村温泉の名所「荒湯」の近くにオープンしたワーキングスペース付きのカフェ=兵庫県新温泉町(同町提供)
湯村温泉の名所「荒湯」の近くにオープンしたワーキングスペース付きのカフェ=兵庫県新温泉町(同町提供)

新しい年が始まった。新型コロナウイルスに翻弄されたこの2年、関西は飛躍に向けた仕込みを続けてきた。その一つ、観光では、移住促進や働く場所の提供なども含め、従来の観光商品や誘致策にとらわれない取り組みも加速。コロナの状況もにらみつつ、復活に向けゆっくりと歩みを進める。

すべらせない‼ 大阪みやげ誕生

万葉集にも記載され、古代から日本有数の地滑り発生地として知られる「亀の瀬」地域。日本遺産に認定されたことを受け、地元の大阪府柏原市は観光資源として売り出す試みを本格化する。日本遺産をテーマとした商品を地域ブランドとして認定する制度を創設。「地滑り」ブランドを押し出し、地域活性化を図る。

亀の瀬の亀岩をモチーフにしたお菓子「大和川の亀岩」
亀の瀬の亀岩をモチーフにしたお菓子「大和川の亀岩」

ブランド名は「もう、すべらせない‼」。地元商店などから対象商品を募集した。1月に認定される商品には、亀の瀬をモチーフにしたお菓子「大和川の亀岩」(210円)やスパークリングワイン「たこシャン」(1430円)など10事業者13品が選ばれた。

亀の瀬は生駒山地と金剛山地に挟まれた、奈良県三郷町にまたがる渓谷。地滑りで埋もれた明治時代のトンネル「旧大阪鉄道亀瀬隧道(ずいどう)」や、亀形の岩「亀岩」などがある。市は「ブドウ狩りだけでない観光の魅力を発信したい」と話す。

温泉街でワーケーション

新型コロナウイルス禍での新しい働き方として注目される、仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を組み合わせた「ワーケーション」。兵庫県北西部に位置し、湯村温泉などの温泉郷で知られる新温泉町は町ぐるみで誘致に取り組んできた。人口減少が進む中、交流人口増加を目指す。

鳥取空港に近く、東京からのアクセスの良さをアピール。昨年4月には温泉を見下ろしながら仕事ができるカフェがオープンするなど魅力を高めてきた。

それでも同町の担当者は、箱根や熱海など他の温泉地との競争は厳しいとする。地域と進出事業者の関係を強めるため、町内で新事業を展開してもらうなどの必要があるという。

そうしたなか、鹿の獣害がある地域で鹿罠の実験をしたり、地域の食材を使った商品をネットで販売したりする事業者も現れた。担当者は「町とかかわってくれる企業や人を増やしていけたら」と意気込む。

グランピングでにぎわい

新型コロナウイルスの影響で屋外レジャーが人気を集める中、自然を満喫しながら豪華なキャンプを楽しむ「グランピング」が脚光を浴びている。琵琶湖など雄大な自然を擁する滋賀県にはグランピングレジャー施設が次々とオープン、にぎわいを見せている。

大阪、京都といった都市圏からアクセスがよいことから、琵琶湖畔を中心にグランピングレジャー施設が増加。近江舞子内湖(大津市)沿いに昨年4月に開業した「エバーグレイズ琵琶湖」には、県内外から多くの利用者が押し寄せる。

開放的な空間でレジャーを楽しめるエバーグレイズ琵琶湖
開放的な空間でレジャーを楽しめるエバーグレイズ琵琶湖

県の観光振興に取り組む「びわこビジターズビューロー」の担当者は「滋賀はグランピングにぴったり。毎年のように新しい施設が登場している印象」と指摘する。観光関係者らはアフターコロナも見据え、誘客の〝切り札〟として期待を寄せる。

文化学習と観光と

世界遺産・高野山(和歌山県高野町)の寺院「清浄(しょうじょう)心院」は昨年11月、所蔵する文化財の調査拠点となる「高野山文化歴史研究所」を境内に開設した。調査結果などを広く伝えていくため、勉強会や寺宝展などを検討。新たな観光スポットとしてだけでなく、高野山研究の新学習拠点としても定着させたいとしている。

高野山研究の調査拠点「高野山文化歴史研究所」を開設した清浄心院
高野山研究の調査拠点「高野山文化歴史研究所」を開設した清浄心院

清浄心院は平安時代、高野山を開創した空海が開いたと伝わる。戦国武将・上杉謙信の祈願所で、江戸時代には諸大名とも宿坊関係を結んでいた。寺院では今も数多くの文化財を所蔵。蔵の中には中身が判然としない箱も多数あり、今後の調査が期待されている。

木下浩良所長は「文化財は活用してこそ価値がある。観光客や学校関係者が訪れ、にぎわいにつながれば」と話している。

移住促進で活性化

京都府北西部に位置する福知山市が「空き家バンク制度」を通じた市外からの移住を伸ばしている。令和2年度は前年度比約1・9倍で過去最多となる21世帯(37人)が移住。3年度(11月末現在)も18世帯(48人)が移住しており、2年度を超える勢いだ。

子供に関する行政手続きや相談などを一括に受け付ける「子育て総合相談窓口」=京都府福知山市
子供に関する行政手続きや相談などを一括に受け付ける「子育て総合相談窓口」=京都府福知山市

「お試し住宅が(好調な)移住に寄与している」。市移住定住促進係の市田恵美さんはこうみる。移住希望者用の「お試し住宅制度」は多くの自治体が採用しているが、利用期間は数日~数週間程度がほとんど。福知山市では最長1年間の利用が可能で、市をよりよく知ることができるのが人気の要因の一つだ。

また、妊娠・出産から就学前の子供に関する相談などの窓口を一本化した「子育て総合相談窓口」を開設。20~40代の子育て世帯の移住につながっている。

伝統文化と食事 旅の醍醐味

地域独自の文化や伝統とともに食事を楽しむ旅のスタイル「ガストロノミーツーリズム」。この世界フォーラムが奈良県で6月に開かれる。県は食と観光の融合を図る取り組みを進めている。フォーラムは2015年から国連世界観光機関(UNWTO)が中心となって開催しているが、日本では初めて。

2021年にベルギーで開かれたガストロノミーツーリズムの世界フォーラム(奈良県提供)
2021年にベルギーで開かれたガストロノミーツーリズムの世界フォーラム(奈良県提供)

県はフォーラムに先立ち、国際シンポジウムを計画。「ガストロノミーツーリズムが浸透するようにしたい」と意気込む。

他にも日本最古の道「山の辺の道」周辺の食や文化の魅力を楽しめるオンラインツアーなどを開催し、動画を配信。新たな観光スタイルで地域を盛り上げる。