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猟銃立てこもり、男の身柄確保

熱海盛り土「周知されていれば…」 遺族の悲しみ癒えず

熱海土石流の被害者の会会長を務める瀬下雄史さん(岡田浩明撮影)
熱海土石流の被害者の会会長を務める瀬下雄史さん(岡田浩明撮影)

死者・行方不明者27人。建物被害136棟。昨年7月、静岡県熱海市伊豆山(いずさん)を襲った大規模土石流は、1月3日で発生から半年を迎える。新しい年が明けても、遺族の深い悲しみは癒えない。

千葉県在住の瀬下(せしも)雄史さん(54)は母、陽子さん=当時(77)=を失った。子供の頃、怒られると竹製の布団たたきでよくたたかれた。台所で料理をしている姿も思い浮かぶ。

3週間後の対面

「伊豆山が大変なことになっている」。昨年7月3日午前11時ごろ、弟から電話があった。テレビから、大量の土砂で家屋などが流される映像が飛び込んできた。その場所の近くに、一人暮らしの母の自宅があった。

「これはやばい」と慌てて何度も電話したが、通じない。ツイッターで目撃情報も求めたが、有力な情報は得られなかった。焦りが募る中、待ち続けた母と対面できたのは、発生から約3週間後の25日。遺体安置所でだった。「(生前の)面影は一切なかった」

約1カ月後、病気で入院中の父が後を追うように他界した。仲のよい夫婦だった。老後を2人で暮らそうと、父が結婚記念として伊豆山の物件をプレゼントし、約20年前に横浜市から移住。心労を気にして母の死は、父には最期まで告げなかった。

悲しみに暮れるなか、被害を拡大させたとされる違法な盛り土の存在を知った。「人災」の認識を強くし、8月、遺族らでつくる被害者の会を立ち上げた。会長を引き受けた瀬下さんは、盛り土の土地所有者らを重過失致死罪などで告訴。被災住民らも9月、不適切な盛り土が土石流の原因だとして土地所有者らに損害賠償を求めて集団提訴し、11月には別の遺族が殺人罪で告訴した。

憤りから使命感へ

当初は憤りが原動力だったが、今は使命感が強い。「全国規模で再発防止に向けて取り組み、世の中を変えることが、命を落とした人たちに報いることになる。大切な人を失った遺族だからこそ、どれほど悲惨かを分かっているから」

活動は全国に影響している。内閣府の有識者検討会が危険な盛り土に対応できる法整備の必要性を求めれば、県も盛り土造成を完全許可制とするなど規制強化のための条例制定を目指している。盛り土への行政対応が適切だったかの検証も始まった。

ただ、危険な盛り土の存在が事前に周知されてさえいれば「避難して犠牲者はいなかったかもしれない。市の過失は大きい」と瀬下さんは唇をかむ。被災地は復興に向けて動き出しているが、悲しみと怒りは薄れない。寝付けない夜もあった。「一人ではふさぎこんでしまう。だからこそ互いに癒やし、助け合えるような意義も被害者の会にはある」と話す。

半年となる3日は、被災地で手を合わせる。真相究明や再発防止を願うとともに、天国の陽子さんら犠牲者の冥福を祈る。「今年は平和な、本当に平和な年になってほしい」