若女将、元AKB48の島田晴香さん 「広告塔」の覚悟

「熱海のためになるならば使えるものは使いたい」と、アイドルなどの多様な経験を生かすと語る島田晴香さん=静岡県熱海市の「旅館立花」(松本恵司撮影)
「熱海のためになるならば使えるものは使いたい」と、アイドルなどの多様な経験を生かすと語る島田晴香さん=静岡県熱海市の「旅館立花」(松本恵司撮影)

昨年7月、静岡県熱海市伊豆山(いずさん)を襲った大規模土石流は、1月3日で発生から半年を迎える。少しでも地元の力になればと、被災者支援を続ける若い世代がいる。

「ありがとうございます。旅館立花(たちばな)でございます」。熱海市内で創業70年を誇る老舗旅館「立花」の若女将、島田晴香さん(29)が涼やかな声で電話に応対する。約2年前から家業を本格的に手伝うようになったきっかけの新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、客足がようやく戻り始めた昨年12月のことだ。「ありがたいことに徐々にお客さまは戻ってきていますね。熱海市内を見ても人出は増えたなと思います」と感慨深げに話す。

CFで支援募る

アイドルグループ・AKB48のメンバーとして8年間、芸能活動に携わり、卒業後には海外留学、一般企業就職、アイドルタレントのセカンドキャリア支援を目的とした会社の起業とキャリアを積んできた。「後悔なく生きたいなと思い、いろんなことに挑戦したいという思いがあった。難しいですよね、認めてもらうのは」。自らもセカンドキャリアを試行錯誤した。

そんななか昨年7月、故郷を襲った大災害。翌月にクラウドファンディング(CF)を立ち上げて地元支援をしようと考えたときも「何が一番必要なのか」と自問した。やるべきか迷ったともいう。「被災者の方々のためになるのかな」。だが約1カ月余で目標額を上回る約333万円が集まり、「私一人ではできなかった」と感謝する。

「生まれ育った町で、ああいう(土石流が襲う)映像はまさかという感じでした。市民で(被災地を)通らないで生きてきた人はいないんじゃないでしょうか」というほど生活に密着した場所を襲った悲劇に心を痛めた。CFはまさに純粋な気持ちの発露だった。

出会いに恵まれ

3日で発生から半年。ニュースが消費される現代社会だが、「そこで生まれ育った人だったり、生きている人たちがどう考えて生きていくかが大事だと思います。いろんな方に助けてもらって復興に向かっていることを市民が忘れないでいつづけることが一番なのかなと思います」と説く。そのために〝広告塔〟としての役割を担うことも「最大限生かすことができて、熱海のためになるならば、使えるものは使いたいと考えています」と覚悟を示す。

「本当に人気がなかった」と、アイドルとして不向きだったと繰り返す島田さん。ただ、応援してくれたファンとの出会いや、旅館の宿泊者との触れ合いなど「人と出会うことに恵まれているなと、最近思いますね」と話し、好きな言葉に「一期一会」を挙げる。「人生楽しく幸せに、一日一日を悔いなく、生きていくことが一番かな」。そっと言葉をつむいだ。

■しまだ・はるか 平成21年にAKB48のオーディションに合格し、副キャプテンを務める。29年に卒業し、芸能界も引退。令和2年にアイドルタレントのセカンドキャリア支援を目的とする会社を起業。起業してから本をよく読むようになったという。経済関連が多いそうだ。海も山も見える旅館の屋上がお気に入りの場所とか。